商店街を歩いていても、おでん屋のテーブルで後輩たちと語らっていても、マラソン大会に出場しても、あるいはロケ地にいても、たしかに光石はそれぞれの場の空気に妙になじんでいる。気取らず、目立たず、威張らずで、スターの匂いをあえて醸そうとしていないようにさえ見える。

 ゆえに、映像に現われたときに、わざとらしさを感じないし、嘘くささが臭わないのだろう。演出家や監督たちがつい光石に声をかけてしまうのも、いわゆるスターとは真逆の「個性」があるからなのではないか。

「脇役ばかりでなく、主演してみたいとは思いませんか」と尋ねると、こう返してきた。

「いや、まったく、そういうことにこだわってないですね。本当に。市井の人で主演が来たらやりたいですけど。

 僕にはレインボーブリッジを止めるような役は絶対に来ないです。あれは、やっぱり個性あるスターでないとできない。となると、まあ、主演は僕にはあまり関係ないということです」

 光石研は、ひたすら名脇役の道を歩み続ける。「個性なき個性」という唯一無二の武器は、これからさらに輝きを増していくのだろう。

●みついし・けん/1961年、福岡県生まれ。1978年、映画『博多っ子純情』でデビュー。以来、『Helpless』『それでもボクはやってない』『めがね』『あぜ道のダンディ』『共喰い』など200作以上の映画に出演。『砂の塔~知りすぎた隣人』『コールドケース 真実の罪』『奇跡の人』などテレビドラマへの出演も多い。今年の映画待機作は北野武監督の『アウトレイジ 最終章』など。

撮影■二石友希 取材・文■一志治夫

※週刊ポスト2017年2月3日号

関連記事

トピックス

鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン