商店街を歩いていても、おでん屋のテーブルで後輩たちと語らっていても、マラソン大会に出場しても、あるいはロケ地にいても、たしかに光石はそれぞれの場の空気に妙になじんでいる。気取らず、目立たず、威張らずで、スターの匂いをあえて醸そうとしていないようにさえ見える。

 ゆえに、映像に現われたときに、わざとらしさを感じないし、嘘くささが臭わないのだろう。演出家や監督たちがつい光石に声をかけてしまうのも、いわゆるスターとは真逆の「個性」があるからなのではないか。

「脇役ばかりでなく、主演してみたいとは思いませんか」と尋ねると、こう返してきた。

「いや、まったく、そういうことにこだわってないですね。本当に。市井の人で主演が来たらやりたいですけど。

 僕にはレインボーブリッジを止めるような役は絶対に来ないです。あれは、やっぱり個性あるスターでないとできない。となると、まあ、主演は僕にはあまり関係ないということです」

 光石研は、ひたすら名脇役の道を歩み続ける。「個性なき個性」という唯一無二の武器は、これからさらに輝きを増していくのだろう。

●みついし・けん/1961年、福岡県生まれ。1978年、映画『博多っ子純情』でデビュー。以来、『Helpless』『それでもボクはやってない』『めがね』『あぜ道のダンディ』『共喰い』など200作以上の映画に出演。『砂の塔~知りすぎた隣人』『コールドケース 真実の罪』『奇跡の人』などテレビドラマへの出演も多い。今年の映画待機作は北野武監督の『アウトレイジ 最終章』など。

撮影■二石友希 取材・文■一志治夫

※週刊ポスト2017年2月3日号

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