スポーツ

西本聖氏 自身のレコードは「自分にはもったいない名曲」

名投手が自身のレコードの思い出を語る

 かつてプロ野球界では、レコードを出すことがスター選手の証しだった。巨人・中日で活躍した西本聖氏もそのひとり。西本氏が、1988年に発売したレコード『愛あるかぎり』(バップ)について振り返る。

 * * *
 巨人の選手はよくレコードを出していましたけど、僕は人前に出るのが苦手でカラオケを歌うこともなかったから、まさか自分が出すなんて思いもしなかった。でも、プロ入りした頃から付き合いのあった、『高校三年生』の作詞をした丘灯至夫(おか・としお)先生の勧めで、『愛あるかぎり』という歌を出しました。

 トレードで巨人から中日に移り20勝した1989年のオフに、また丘先生から「記念に歌を作ろう」といわれました。普通はレコード会社の会議にかけて検討すると思いますが、先生の鶴の一声でレコード発売が決まったみたいです。

 正直、江川卓さんが引退した1987年に僕も辞めようと思っていました。移籍前の数年はコーチとの確執が話題になって、あることないことで頻繁にスポーツ紙の1面を飾っていましたしね。

 その頃、丘先生の家に行って、よく相談に乗ってもらっていたんです。すると、「歌手は名前を覚えてもらうのが大変。毎日のように名前が出るのは、他の世界から見ると、すごいことなんだよ」と諭してくれたんですね。自分は野球界という小さな世界の中でしか物事を見られない。違った世界から客観的に見ると、そういう考え方もあるんだなと気持ちが楽になりました。

 巨人入団直後から、日本一の歓喜、確執による苦悩、トレードに出された無念、初めて20勝した喜びまで、僕のプロ野球人生の全てを知っている丘先生は、『男』という歌で自分の生き様を歌詞に余すところなく反映してくれていて、凄く嬉しかったですね。

 自分が歌うには、あまりにもったいないほどの名曲です。プロの歌手に歌ってもらってリバイバルで発売してほしいですね。

●にしもと・たかし/1956年生まれ、愛媛県出身。1975年巨人に入団。1980年から6年連続2桁勝利し、1981年に沢村賞を受賞。1989年中日に移籍し最多勝のタイトルを獲得。

■撮影/藤岡雅樹 ■取材・文/岡野誠

※週刊ポスト2017年2月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

『マモ』の愛称で知られる声優・宮野真守。「劇団ひまわり」が6月8日、退団を伝えた(本人SNSより)
《誕生日に発表》俳優・宮野真守が30年以上在籍の「劇団ひまわり」を退団、運営が契約満了伝える
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン
貴乃花は“令和の新横綱”大の里をどう見ているのか(撮影/五十嵐美弥)
「まだまだ伸びしろがある」…平成の大横綱・貴乃花が“令和の新横綱”大の里を語る 「簡単に引いてしまう欠点」への見解、綱を張ることの“怖さ”とどう向き合うか
週刊ポスト
インタビュー中にアクシデントが発生した大谷翔平(写真/Getty Images)
《大谷翔平の上半身裸動画騒動》ロッカールームでのインタビューに映り込みリポーター大慌て 徹底して「服を脱がない」ブランディングへの強いこだわり 
女性セブン
映画『八日目の蝉』(2011)にて、新人俳優賞を受賞した渡邉このみさん
《ランドセルに画びょうが…》天才子役と呼ばれた渡邊このみ(18)が苦悩した“現実”と“非現実”の境界線 「サンタさんを信じている年齢なのに」
NEWSポストセブン
アーティスト活動を本格的にスタートした萌名さん
「二度とやらないと思っていた」河北彩伽が語った“引退の真相”と復帰後に見つけた“本当に成し遂げたい夢”
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、小泉家について綴ります
《華麗なる小泉家》弟・進次郎氏はコメ劇場でワイドショーの主役、兄・孝太郎はテレビに出ずっぱり やっぱり「数字を持っている」プラチナファミリー
女性セブン
調子が上向く渋野日向子(時事通信フォト)
《渋野日向子が全米女子7位の快挙》悔し涙に見えた“完全復活への兆し” シブコは「メジャーだけ強い」のではなく「メジャーを獲ることに集中している」
週刊ポスト
1966年はビートルズの初来日、ウルトラマンの放送開始などが話題を呼んだ(時事通信フォト)
《2026年に“令和の丙午”来たる》「義母から『これだから“丙午生まれの女”は』と…」迷信に翻弄された“昭和の丙午生まれ”女性のリアルな60年
NEWSポストセブン
6月2日、新たに殺人と殺人未遂容疑がかけられた八田與一容疑者(28)
《別府ひき逃げ》重要指名手配犯・八田與一容疑者の親族が“沈黙の10秒間”の後に語ったこと…死亡した大学生の親は「私たちの戦いは終わりません」とコメント
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト