ライフ

高血圧ワクチン 1回で数年間血圧安定の夢のような効果

1回の接種で血圧を下げる効果が長期間持続(森下教授)

 高血圧患者は国内に約1010万人もいる。しかし、その対策といえば食事の見直しや運動による減量など体質改善を勧められるばかり。さもなければ「降圧剤」という対症療法に頼るしかない。

 この現状を打ち破ろうとしているのが「高血圧ワクチン」だ。「1回打つだけで、数年間血圧が安定する」という夢のような効果が期待されている。

「今回、特許が成立したことで開発を進める上で最も重要な条件が整いました」

 こう話すのはバイオベンチャー・アンジェスMGの山田英社長だ。1月17日、同社は「高血圧ワクチン」に関する特許が国内で承認されたと発表した。アンジェスMGと共同研究する大阪大学の森下竜一教授は日本での特許取得には大きな意味があると胸を張る。

「新薬の開発には巨額の費用がかかるため、共同で研究を進める製薬会社が不可欠です。ですが特許がないと実用化しても莫大な開発費用が回収できないため、製薬会社は及び腰になる。私たちのワクチンが昨年9月の米国に続き、今回日本でも特許を取得したことで医薬品としての価値が高まりました。

 今後は国内外の大手製薬会社の協力を受けられるようになるはずです。当初の予定より実用化が早まることを期待している」

 高血圧ワクチン最大の特徴は、1回の接種で血圧を下げる効果が長期間持続するということだ。

「マウスによる実験では、寿命の4分の1にあたる半年以上効果が続きました。単純に人間に当てはめると20年近く効果が続いたことになります。1回で数年間にわたって効果が持続することができるはずです」(同前)

 この「高血圧ワクチン」は、体内に病原体などの抗原の遺伝子を注入する「DNAワクチン」と呼ばれるもの。今回開発されたワクチンは人間の体内にある、血圧を上げる物質『アンジオテンシンII』に作用する。森下教授が解説する。

「高血圧ワクチンを投与すると『アンジオテンシンII』の作用を抑える抗体が体内で生成される。DNAそのものを投与することで、長く抗体が維持され血圧の上昇も長期間避けられるのです」

 高血圧は放置していると動脈硬化につながり、脳卒中や心筋梗塞、腎不全など様々な病気を引き起こす。高血圧に起因する死者数は年間約10万人との推定もある。

 ワクチンで血圧を下げれば、これらの重病を未然に予防できるのだ。

※週刊ポスト2017年2月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
“もしトラ”リスクも…(写真/AFP=時事)
【緊迫する中東情勢】イラン・イスラエルの報復合戦、エスカレートすれば日本にも影響 “もしトラ”リスクが顕在化
週刊ポスト