挺対協の尹美香・常任代表は、ナビの学生ネットワークを韓国国内だけでなく海外にまで広げることを計画している。蝶が羽ばたくように各国にネットワークを作り上げるのだという。
すでに米国やフランスで現地の韓国人らが署名集めや講演会などの活動を展開しており、ドイツやオーストラリアにも浸透させる計画だが、なかでも日本は主要なターゲットとされる。
「一昨年には、ナビのメンバーの学生らを二度にわたり日本に派遣し、東京や関西、沖縄の学生らとの交流会を開いています。沖縄では、名護市辺野古や東村高江で反基地運動にも参加しました。挺対協は米軍基地問題を契機に日韓学生の共闘体制を深める狙いがあるようです」(沖縄県警関係者)
現在、ナビは組織構築に勤しんでいる段階だ。実際に影響力を行使するほどの力はない。だが、韓国のデモは、日本と違って若者たちによって牽引されている。その中心をナビが担ったら瞬く間に、国内外に「反日」の火が広がる可能性もある。
今回の釜山の少女像設置問題では、「(ナビは)準備段階ではミーティングに参加するなど積極的に関わっていた」と釜山大学3年生で、釜山の日本総領事館前の慰安婦像設置を主導した馬禧陳氏(22)も認める。同氏は市民団体「未来世代が建てる平和の少女像推進委員会(以下、推進委員会)」であり、「わが民族がひとつに」とも関係がある。
筆者が取材した1月中旬。ソウルの光化門広場では、土曜の晩に厳寒のなか大統領糾弾デモが開かれていた。ところが、会場では「親日売国外交断罪」と書かれたビラが配られ、広場に面した米国大使館に緑色のレーザー光線があてられて「NO THAAD」(THAAD=米最新鋭ミサイル防衛システム)の大きな文字が建物の壁に浮かび上がっていた。これは、外国公館の威厳の侵害を防止するよう定めたウィーン条約違反に他ならない。
朴槿恵大統領の退陣を求めるはずのデモが、反米や反日を叫ぶ場と化している。今回の少女像設置問題も、不幸な歴史を記憶するという本来の目的と遠く離れた強い政治性を帯びている。
※SAPIO2017年3月号