急速な近代化と経済発展を遂げても、政治や行政の腐敗が横行する新興国の市場は中国の独壇場だ。
また、日系企業と取引経験を持つ中国系現地紡績会社の中国人社員(31)は「リスクを怖がりコネもない日系企業には無理だろう」と得意げな表情でこう語る。
「カンボジアの法律上、企業の売り上げに10%の付加価値税(VAT)が課される。だが、うちは現地華僑のコネで税務署の役人に月額400ドル(約4万6000円)の賄賂を渡し、いくら儲けても税金はゼロだ。中国企業ならどこもやっている、最強の節税術だよ」
もちろん、日系不動産会社が運営に携わるプノンペンSEZ(経済特別区)をはじめ、カンボジアには賄賂と無縁のビジネス環境が整備された地区もある。また、首相直属のカンボジア開発評議会(CDC)を経由した大規模投資は比較的クリーンだとされ、日本電産など一部の大手日系企業はこのルートで現地進出を果たしている。
だが、これは裏返せばGDP成長率が年7%を超える同国の市場に対して、多くの日系企業がアプローチできる範囲がごく限られていることを意味する。
こうして、かつて日本が主導して内戦から復興させた国は、いまや中国企業の一人勝ちの場所に変わってしまった。
※SAPIO2017年3月号