国際情報

金正男「日本への無防備な親愛」が自らの首を絞めた側面も

金正男は日本好きとして知られていた

 金正男はなぜ今になって暗殺されたのか。北朝鮮事情に詳しいジャーナリスト・李策氏は、東京新聞・五味洋治記者によるインタビュー記録『父・金正日と私 金正男独占告白』(文藝春秋)の出版後、ある場所で金正男との接触に成功した。

 しかしその際、金正男は「メディアとは一切、関係を断った。どんな企画であれ、今後インタビューに応じることはない」と断言した。

 李策氏が、「自分は在日3世でもある。個人的に話せないか?」と持ちかけたところ、「在日同胞であれ日本人であれ、私が会って話せない理由はどこにもない。しかしメディアとは会わない」と言い、とにかく絶対に書かないとの条件で話をしようという李策氏からの提案にも、「記者はそう言いながら、結局は書くじゃないか」と頑なな姿勢を崩さなかったという。

「李韓永(金正日の甥。20年前、工作員2人に銃撃されて死亡)も金正男も、日本のメディアに金一族のことをべらべら喋ってしまった。金正日と金正恩にすれば、それを放置したままでは、指導者としての示しがつかなくなる。私が直撃した時、金正男もその危険に気づいていたはずです」(前出・李策氏)

『金正男独占告白』の出版に際し、金正男から「待ってほしい」と言われたと、著者の五味氏は明かしている。だが、説得すると「分かった。しかし、もう連絡しない」と金正男は言ったという。同書では、「この世界で、正常な思考を持っている人間なら、三代世襲に追従することはできません」と明かすなど、世襲批判を繰り返した。このことが金正恩の逆鱗に触れたことは容易に想像できる。韓国情報機関・国情院が「金正男暗殺は5年前から計画されていた」と報告したが、まさにその時期は“暴露本”の出版時期とぴたりと重なる。

 金正男は日本好きとして知られ、東京ディズニーランドを訪れるため偽造パスポートで入国し、日本の警察に拘束されたことがあった。結局、彼の首を絞めたのは、日本と日本人に対する無防備な親愛だったということか。

※週刊ポスト2017年3月3日号

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁/時事通信)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン