初代FIREのCMソングを、商品コンセプトに相応しいとの理由で、米大物歌手のスティービー・ワンダーに作曲して欲しいと考えた。会社の経営会議では反対の声も出たが、自ら手紙を送るなど粘り強く交渉を続け、ついに口説き落とした。「アメリカのスタジオで初めて聴いた試作曲にはダメ出しまでしたといいます」(永井氏)
そんな佐藤氏がキリン時代から一貫して持ち続けている商品開発の鉄則が、「消費者目線」と「サプライズ」だ。
「まず部署や役職、年齢に関係なく新商品開発のプロジェクトチームを結成し、さまざまな仮説を立てながら、メンバー間で意見を出し合っていきます。そして、消費者の要望や不満を徹底的にリサーチし、他社の二番煎じではなく消費者のサプライズを呼ぶ商品に仕上げていきます。
トップメーカーであれば既存の売れ筋ブランドを強化するやり方もあったでしょうが、ビールではアサヒ、清涼飲料ではコカ・コーラやサントリーといった上位メーカーを追う立場。佐藤さんはコツコツとヒットを打つよりも、一発ホームランを狙う付加価値の追求、いわば常識にとらわれない切り口で新商品を生み出してきたのです」(永井氏)
そしていま、佐藤氏は主戦場を飲料業界から菓子業界に変え、まさに自身のプライドもかけた新作ポテチを世に送り出した。
「カルビーの牙城を崩すためには、奇をてらった商品だけでなく、固定ファンを掴む息の長い商品育成が欠かせない」(前出・経済誌記者)
との指摘もあるが、果たして佐藤氏は湖池屋でも新たな伝説を刻むことができるか。