国際情報

金正恩氏が劣等感を抱く正男氏の息子・ハンソル氏の出自

金正男氏の息子の運命やいかに

 北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄・金正男氏が2月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港で暗殺されてから2週間が経過した。

 北朝鮮では金日成の時代から政治犯罪者の処刑に際して「一族郎党の連座」という“ルール”がある。父や祖父や兄を処刑されたことを恨む遺族がやがて復讐を企てたり、反政府勢力のシンボルに担ぎ上げられたりするリスクを摘むためである。

 近年、この封建時代的な手法は緩和されたともいわれるが、今回の金正男の“処刑”に関してはそうはいかない。

 マレーシアで暗殺された正男には、若くして北朝鮮を離れ、西側諸国で学んだ21歳の息子、金ハンソル氏がいる。金正恩にとって自らの権力を脅かす危険な存在にして、一方で北朝鮮を牽制したい米国、韓国、中国にとって最高の切り札だ。

 マレーシア警察による捜査の進展に関心が寄せられる一方で、ハンソル氏の動向も、より大きな注目を集めている。

「遺体引き渡しの優先権」を与えられた“筆頭近親者”であるハンソル氏のマレーシア入りは情報が錯綜したが、入国の有無が注目されている時点で、「ハンソル氏と金正恩の関係は対立構造にある」と指摘される。

「ハンソル氏が警察に協力すれば、これまで強硬に遺体の引き渡しを主張していた北に対して公然と弓を引くも同然の行為。“正男の次はハンソル”と金正恩が照準を定め直すのは必至だ」(韓国の情報機関・国家情報院関係者)

 今回の暗殺事件以前から、「正男氏同様、暗殺対象に挙がっていた」(同前)とされるハンソル氏だが、そこには金正恩が抱くコンプレックスが潜んでいたという。『コリア・レポート』編集長の辺真一氏の解説だ。

「建国の父・金日成主席の曾孫に当たるハンソル氏は金王朝の正統後継者を意味する“白頭山(※注)の血統”に連なる出自を持つ。

 祖母の成恵琳(故人)は国民的女優で金正日総書記の第2夫人。一方、正恩氏の母親・高英姫(故人)は大阪出身の在日2世で3番目の妻だった。ハンソル氏に対して正恩氏が劣等感を抱き、いつか自分の地位を脅かす存在だと恐怖心を抱くことは想像に難くない」

【※注/中国東北部吉林省と北朝鮮との国境地帯に連なる山。抗日ゲリラの拠点地として金日成が滞在していた地とされ、そこで金正日が誕生したという“伝承”がある。北朝鮮のロイヤルファミリーの血統を意味し、金一族による世襲統治の正当性を示す言葉として用いられる】

※週刊ポスト2017年3月10日号

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン