巨大コングロマリット「日立グループ」。東芝やシャープの不振とは対照的に、いまや米GE、独シーメンスら「世界の巨人」と肩を並べようとしている。日立グループの2015年度(2016年3月期)の売上高は10兆343億円、純利益2947億円、総従業員数33万5244人は総合電機業界で最大規模と、その安定感は際立っている。
そんな日立にもかつて大きなピンチがあった。2008年のリーマン・ショック以降4年連続の最終赤字となったが、2011年3月期に黒字転換。2014年3月期には23年ぶりとなる過去最高益を達成するV字回復を成し遂げたのだ。
それだけの短期間で復活できた最大の要因は、不採算事業から撤退し、より採算性の高い事業に経営資源を集中させる「選択と集中」にあった。
「選択と集中」は再起を図る企業の決まり文句であり、珍しいものではない。事実、東芝もそのフレーズを掲げてきた。なぜ日立は成功し、東芝は失敗したのか。『経済界』編集局長の関慎夫氏は「経営トップの覚悟」を理由に挙げる。
「日立と同時期に東芝も大赤字となったが、日立の赤字額は東芝の2倍と段違いだった。その傷が大きかったことで、むしろ日立は覚悟を持って変身できたのです。
それまでの日立は家電畑出身者やパソコン畑出身者が社長を歴任し、重電からの脱却に舵を切っていた。しかし2009年に子会社の社長だった保守本流の重電畑の川村隆氏(前会長)が本体に呼び戻され、重電回帰という社内の意思統一を図り、会社をまとめていったのです」