ライフ

がん検診で見つかるガン 放っておいても自然に治る例多数

がん検診で見つかったがんは治療する必要があるか?

 がん検診を受けると、「命を奪わないガン」をたくさん見つけてしまうことになるのだという。それが最も多いと考えられているのが、「前立腺がん」だ。「PSA(前立腺特異抗原)」という血液を調べる検診が普及した2000年頃から、新規患者が激増した。

 京都大学医学博士の木川芳春氏は、このような命を奪わない病変を「ニセがん」と呼ぶ。

「新規患者がうなぎ上りに増えているのに、死亡者の数が横ばいなのは、命を奪わない『ガンに似た病変』をたくさん見つける『過剰診断』が多いことを意味しています。日本では検診によって『ニセがん』をたくさん見つけることで、新規患者の水増しが行なわれているのです。私は、前立腺がんの半分以上は『ニセがん』だと考えています」

 前立腺がんでは、検診で見つかる早期がんのほとんどが、いわゆる「ニセがん」なので、それで死ぬことはない。つまり、1~3期の10年生存率が100%と異常に高いのは、早期に見つけて治療した成果ではなく、元々命を奪わない「ニセがん」ばかりを検診で見つけている結果といえる。

 こうした「ニセがん」は、「乳がん」「子宮頸がん」「甲状腺がん」などでも多いと指摘されている。これらのがんも、全症例の10年生存率が80~90%台と軒並み高い。数字がよく見えるのは、「早期発見、早期治療によりガンが治った」というよりも、前立腺がんと同様に、命を奪わないニセがんが多く含まれているからなのだ。医師で医療統計が専門の新潟大学名誉教授・岡田正彦氏もこう話す。

「がん検診で見つかるガンの中には、放っておいてもいいガンや、自然に治るガンが、かなりの割合で含まれています。このようなガンばかりを見つければ、当然、生存率は高くなります。昔に比べて生存率が高くなったように見えるのは、治療が進歩したからとは断言できないのです」

 一方、命を奪う「本物のガン」は進行が非常に速いため、定期的にガン検診を受けても、早期で発見することは難しい。そうしたガンは、周囲に広がっている3期や、転移のある4期の状態で見つかることが多いので、必然的に10年生存率が低くなる。

「食道がん」「肝胆膵がん」「肺がん」「卵巣がん」などで全症例の10年生存率が低いのは、進行が速い悪性度の高いガンが多いからだ。これらのガンは早期発見することも、完全に治すことも、まだまだ難しい。

 10年生存率からは、このような厳しい現実も読み取られるべきだろう。

●鳥集徹(ジャーナリスト)と本誌取材班

※週刊ポスト2017年3月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「日本ではあまりパートナーは目立たない方がいい」高市早苗総理の夫婦の在り方、夫・山本拓氏は“ステルス旦那”発言 「帰ってきたら掃除をして入浴介助」総理が担う介護の壮絶な状況 
女性セブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン
アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで5歳の少女が意識不明の状態で発見された(被害者の母親のFacebook /オハイオ州の街並みはサンプルです)
【全米が震撼】「髪の毛を抜かれ、口や陰部に棒を突っ込まれた」5歳の少女の母親が訴えた9歳と10歳の加害者による残虐な犯行、少年司法に対しオンライン署名が広がる
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン