ビジネス

ベンツやボルボの自動運転はきちんと「上等」を表現している

部分的自動運転は驚きの進化(メルセデス・ベンツ「GLS」)

 今日、クルマの次世代技術で脚光を浴びている自動運転技術。自動運転の最高峰は、酒を飲んでいようが免許を持っていなかろうが、パセンジャーが望むところへ走り、万が一のアクシデント時はクルマが責任を負ってくれるという、文字通りの完全自動運転車だ。

 それを目指して世界の自動車メーカーやIT会社が激しい開発競争を繰り広げているものの、実現はまだまだ遠い先の話だ。が、その競争の恩恵はすでに市販車に表れはじめている。完全自動化よりはるか手前の、いわば“部分的自動運転”の性能がとてつもない勢いで進化しているのだ。

 昨年夏、筆者はメルセデス・ベンツの大型SUV「GLS」で東京~鹿児島間をツーリングしてみた。そのモデルには「ディストロニック・プラス」という半自動運転装置が備えられていたが、その性能は驚くほどのものだった。

 高速道路やバイパスではステアリングコラムの左下についていた小さなレバーを時折調節するだけで、速度調節に関してはほぼ完璧、ステアリング操作も白線がちゃんと認識可能なところでは、ほとんど自動的にドライブできてしまう。

 が、驚いたのはその機能性の部分ではない。ディストロニック・プラスの特徴として際立っていたのは、単にクルマを半自動で走らせるのではなく、直進、コーナリング、加減速などさまざまな局面において、走りの質感の高いクルマに乗っているとドライバーやパセンジャーに思わせるような走らせ方をすることだった。

 直進区間では直進性が素晴らしいように、カーブ区間では上手なドライバーのように緩やかなアウトインアウトの弧をすーっと描くように曲がる。法規の関係上、長時間の手放し運転は許容しないように作られているが、ステアリングに軽く添えた手に伝わるステアリング制御の感触も上等なものだった。ほとんどオートで走っているのに、まるで自分が上手にクルマを走らせているような気にさせられた。

 俗にプレミアムセグメントと呼ばれる高級車クラスでは、走り味や操作感が良いことは非常に重要なファクターだ。クルマの自動化といえばクルマの操作が減ることばかりに気が行っていたが、自動化技術はクルマの良さを上げることにも使えるのだ。

 自動化でいかに上等な走り味を表現するかということは、とくに高級車クラスでは今、かなりの競争領域になっているようだ。

 ボルボがつい最近日本市場に投入した大型セダン/ワゴンの「S90/V90」のレベル2自動運転相当のシステム「パイロット・アシスト」も、直線、コーナーとも車線内でクルマが右、左とチョロチョロ動くようなことがなく、すーっと糸を引くようにクルーズした。

 また、車線認識技術にかなりの進歩があったようで、車線がかすれていたり、前方の大型車が車線をまたぐように走ったりといった厳しい環境でも車線を見失わない。認識アルゴリズムはもちろん秘中の秘だが、システムの挙動からみて、白線だけでなく、周囲のさまざまな物を見て車線を判定、維持しているようだった。

 運転の自動化が進むと、ドライバーは刺激が足りなくなり、眠気や注意力の散逸を誘発する可能性があると言われている。筆者もアダプティブクルーズやレーンキープアシストを使ったときにそういう体験をしたことが何度もあり、それが自動化の宿命だと思っていた。

 しかし、自動運転技術の開発の激化は技術の進歩だけでなく、その技術でどうやったら人を面白がらせることができるかという視点のノウハウの蓄積ももたらしているようだった。上記の2モデルは、やることが少なくなったことが退屈につながらず、むしろ注意力が外の景色に向くことで安全性と楽しみが増すという感じであった。

関連キーワード

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン