日本補聴器工業会の発表(2015年)によると、国内の推定難聴者数は約1994万人、全人口の15.2%と試算されている。しかし、このうち自分の聴力が衰えていることに気づいている人はほぼ半数の53%に過ぎないという。
難聴は、初期段階で治療すれば治る可能性は高く、進行も食い止められる。難しいのはこのように自覚症状がないケースが多数を占めるからだ。また「歳だから仕方ないだろう」と放置しておくと、加速度的に聴力は落ちていくという。耳鼻咽喉科専門病院・日本橋大河原クリニックの大河原大次院長がこう解説する。
「難聴の恐ろしさは、聴力が落ちるだけに留まらないことです。聴神経腫瘍といった、命に関わる重大疾患によって引き起こされている可能性もある。難聴の原因を一刻も早く突き止め、適切な治療をすることが重要です」
専門医の診断を仰ぐ必要があるかを調べる目安として、大河原院長監修のチェックリストを作成した。
●会話の最中に、度々、聞き返すことがある
●小さなささやき声だと、何を言っているのか分からない
●大人数の居酒屋などでは、話し声が聞き取れないことがある
●早口の人、ぼそぼそ話す人の声が聞き取りにくい
●会合で話が聞き取りにくく、二度聞きすることがある
●劇場で後方の席に座ると、セリフがよく聞き取れない
●家族から「テレビやラジオの音が大きい」と注意される
●ドアの開閉やチャイム音に、自分だけ気づかないことがある
●銀行、病院で名前を呼ばれても気づかないことがある
●家族以外の人から「難聴ではないか」と指摘されたことがある
「2つ以上の項目に該当する場合は、難聴の可能性があります。6つ以上なら、難聴レベルは非常に高いと考えられ、医師の診断によっては補聴器の使用などが必要になる」(同前)
※週刊ポスト2017年4月7日号