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大使一時帰国は戦争一歩手前、国交断絶も辞さない怒りの表明

平昌五輪の会場となる江陵アイスアリーナ 共同通信社

 4月4日、韓国・釜山の慰安婦少女像設置への対抗措置として一時帰国していた駐韓大使と釜山総領事は帰任した。次期政権に向け、像の撤去を働き掛けるという。韓国はなぜ、反日行動を止めないのか。政府と政府による外交上の合意が守られなかった韓国に対し、日本がいまとっている行動の意味について、経済評論家の三橋貴明氏が語る。

 * * *
 2015年12月の日韓慰安婦合意以降も、韓国側の反日行動は止むことを知らない。2016年8月15日には、日本固有の領土であるにもかかわらず、韓国が実効支配している竹島に同国の超党派国会議員団10人が上陸した。それなのに、竹島上陸直後の8月24日、安倍政権は韓国政府が元慰安婦支援のために設立した団体に政府予算からの10億円拠出を決定してしまった。

 そもそも私は、日韓慰安婦合意には猛反対だった。日本側がいくら念を押したところで、韓国側には慰安婦像撤去どころか、いわゆる慰安婦問題自体を解決する意志など微塵もない。なぜなら韓国は、揉め続け、日本側を貶め続けることこそが韓国の「国是」、ひいては「国益」だと考えているからだ。

 案の定、2016年12月末に、日韓合意が韓国側から一方的に反故にされる事態が起こった。韓国の市民団体が釜山の日本総領事館前に新たな慰安婦像を設置したのである。

 これにはさすがに日本政府も怒り心頭に発し、長嶺安政・駐韓大使の一時帰国、日韓通貨スワップ協議の中断などの措置を取った。大使の一時帰国は外交上、派遣先の国による非礼極まりない行為に対して行う措置だ。これは戦争一歩手前、相手との国交断絶も辞さないという強い怒りの表明である。

 もっとも、日本に対して何度も無礼な行為を繰り返しているためか、韓国では日本による大使の一時帰国の重大性があまりわかっていないようだ。

【Profile】みつはし・たかあき/1969年熊本県生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)経済学部卒業。2008年に中小企業診断士として独立。近著に『世界同時 非常事態宣言』(渡邉哲也氏との共著・ビジネス社)、『中国不要論』(小学館新書)など、他著書多数。

※SAPIO2017年5月号

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