彼らの国旗デモは弾劾最終局面ではロウソク・デモを上回る量的拡大を見せていた。韓国の現代政治史で右翼・保守派がこれほどの動員力で“街頭闘争”を展開したことはない。韓国世論には文在寅氏の対北宥和姿勢とその裏にある反米傾向に対して、明らかに不安と不満もあるのだ。
盧武鉉時代に戻れば、あれだけ反米言辞で意気盛んだった盧武鉉が、最後は左派の反対を押して米韓FTA締結に踏み切っている。反米・親北路線も現実にぶつかれば手直しは不可避ということだが、これについて政界筋では「盧武鉉にはカリスマと決断力があり左派をコントロールできたが、文在寅にはそれがない」といわれている。
そこで保守派は「保守政権10年で欲求不満を溜め込んだ親北・左派勢力は文在寅の日和見を許さないだろう」と盧武鉉時代以上に警戒している。ポスト朴の左右対立は“弾劾政治”以上に激化の可能性がある。韓国は反米・親北で幸せになれるの(?)ここは韓国国民にガンバッテもらうしかない。
【PROFILE】黒田勝弘●1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても〝日本離れ〟できない韓国』(文春新書)、『韓国はどこへ?』(海竜社刊)など多数。
※SAPIO2017年5月号