たとえば、道徳の教科書ではパン屋が和菓子屋に修正されたが、世界中でパンを食べてきた私に言わせると、日本ほど美味しいパン屋が多い国はない。ラーメンも独自の進化を遂げて発祥の地・中国で大人気を博し、訪日中国人たちは競って日本のラーメン屋に並んでいる。自動車や家電などの工業製品は言わずもがなである。
また、欧米列強に比べ大きく後れていると自覚した明治維新の時は極めて早く近代化を成し遂げることができたし、第二次世界大戦に敗れて焼け野原となった戦後も急速に復興できた。日本人には、あらゆる困難を克服する能力があるのだ。
そもそも日本人は同じウラル・アルタイ語族のモンゴル人、朝鮮人や、満州人、漢人、南方系などが渡来して“混血”になった民族だ。神話に基づいた土着の「選民」思想とは逆に、多人種・多民族が混じり合うことによって獲得された「進取の精神」と「困難を克服する能力」こそが日本人の真骨頂であり、世界に誇れるものなのだから、そういうことを小中学校ではしっかり教えるべきだと私は思う。
「忖度」は「以心伝心」の日本文化だという意見もあるだろうが、今回の教科書検定で否定されかけた聖徳太子は、「十七条憲法」の中で「夫れ事は独り断むべからず、必ず衆と論ふべし」(第十七条)と説いている。日本初の成文法において、すでに「一強」や「腹芸」のような政治を戒めていると言えなくもない。