――難しい「対等」はどうやって目指したら?
「擬人化」ではなく「擬猫化」してみることですね。よく「擬人化」して人間の気持ちを投影して「ひとりぼっちでお留守番させて可哀想~」などと思ってしまいがちだけれど、それは猫の習性を理解せずに感情移入だけが過剰になっている状態だと思います。逆に自分が猫だったらどうされたい?と考えてみましょう。
――留守番もおすすめですか?
そうですね。非日常を経験した猫は、精神的にも強くなってきますから。元気な猫だったら、1泊2日くらいは放っておいても大丈夫。基本的に放っておいてほしい動物ですし、環境の変化が嫌いだから、ペットホテルではなく家にいたいんです。もし預ける場合は、猫にそれを伝えることが大切。大抵の人は猫に何も説明しないで預けに行きますが、猫からしたら、自分のテリトリーがあるのに預けられる理由がわからないんですよね。だから、猫にちゃんと説明するようにしてほしいです。
――南里さんは猫扱いせず、人と話すように対等に会話をしていますよね。
はい、人に話すのと同じように話します。猫にわかるはずはないというのは人の思い込みです。猫には私たちの感情も意思も伝わりますから、コミュニケーションを上達させることは可能なんです。でも、ちゃらちゃら語りかけてはだめ。猫は家人から尊重されているかどうか、ちゃんと感じ取る動物ですから、真剣に、対等の意識で話します。「こういう理由で病院へ行きます。痛いことはしないですぐに帰ってくるよ」とか、「病院に行って何でもなかったら私が安心できるから協力してね」というふうに話します。もし猫にとって必要なら、自分からキャリーケースに入ってくれます。言語の違う人とでも通じ合えるように、彼らは“雰囲気”で理解するんですよ。
【南里秀子(なんり・ひでこ)】
1958年生まれ。1992年、猫専門のシッティングサービスを創業。猫の生涯保障部門を開始し、「猫の森」としてシッター育成や猫に関するセミナーを展開している。2009年に世界初、キャットシッターの視点から猫について解明する『猫の學校』セミナーをスタート。著書に『猫の森の猫たち』(幻冬舎文庫)『猫と暮らせば』(小学館文庫)『猫と人と古民家と』(幻冬舎)など。