そしてきまって皆さんから見えてくる共通点はやはりこれに尽きる。生き方に慣れず、“謙虚”なのである。

 先日東京ドームで行われたテーブルウェアフェスティバル。日本中の器やテーブルセッティングの小物を集めたイベントで私は素敵な年配の女性に出会った。お友達のお母様だ。広い会場を食い入るように見て、歩きに歩いて3~4時間経った頃だった。

私「素敵な物で溢れていて欲しいものが一杯ですね、何を購入されました?」

お母上「ほんとに。手に取るたびに楽しく、とても心が豊かになる一日ね。なので私は自分の生活に見合うものを一つだけ購入しました」

 ハッとした瞬間だった。あれこれ買い込んでしまった器が急に重たく感じた。なんとまぁ、自分の未熟さよ…と嘆く気持ちがより一層私の腕に重みをもたせていたっけ。

“自分に見合うもの” そんなものにシンプルに囲まれて生活をしていきたいと切に思った。いや~しかし素敵なかたのもつ言葉は、いつだってしなやかにさり気なく発せられる。そして、それとは対照的に受けとる側の心に、そのしなやかな言葉は強い説得力となって我が心臓をチクリと突き広がるのだ。

 終活で物を減らすという考えも流行っている昨今、だが私は敢えてこのような言葉に寄り添い年を重ねたい。“自分の生活に見合うもの”かぁ…私に見合うとっておきの器。とっておきの服。果たしてどんな物なのだろう。溢れかえっている情報や物の中で、大切な物が埋もれてしまったらしい。

 謙虚に生きること。生きた分積み上がった“経験”という老廃物も、今だからこそ捨ててみたいと思った出会いだった。

写真/渡辺達生

※女性セブン2017年5月11・18日号

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