「お通夜でも、2~3時間前に到着していた遠い親戚のような方に、湯かんの業者さんが『お集まりの方もご参加ください』とスポンジを手渡して手や足の先を擦るように促してくることがあります。いくら親族と言っても何年も会っていない人もいるでしょう。その人は、故人がお風呂に入った姿など見たこともない。参加してくれと言われてもやはり抵抗があり、かといって断わるのも難しい状況なので、嫌な思いをされる方もいます」
会場の設えでも参列者を驚かせることがある。その最たるものが「遺影」のデジタル化だ。写真の代わりにモニターが飾られ、そこに映し出される個人の映像は、読経中であっても次々に切り替わっていく。有限会社佐藤葬祭の佐藤信顕代表取締役も、そうした演出に戸惑う参列者は少なくないと言う。
「中には集合写真もあって、故人がどこに写っているのかが気になって、見送りに集中できなかった方もいます」
結婚式のスライドショーのようなメモリアルビデオの上映も珍しくない。それに合わせて、葬儀スタッフや司会者が遺族に成り代わって原稿を読みあげるが、その口調は異様な盛り上がりを見せるのだという。
「『○○さんは、いつもそうでしたね』とポエムがかっていたり、大袈裟だったりして泣かせようとしているのが透けて見えてしまうんです。参列者は逆に冷めてしまいます」(同前)