◆妙な演出を切り売り
「おかしな葬式」が増加する背景を前出の島田氏が分析する。
「2010年の著書で日本の葬儀費用は平均231万円と書きましたが、そうしたことへの反省からか、最近は都市部の4分の1は、亡くなった病院から直接、火葬場へ向かう直葬になっています。直葬では、葬祭業者はほとんど儲けられません」
その結果、葬祭業者は、直葬を選ばなかった遺族の葬式で利益を確保しようと、様々な演出を積み上げるようになったという。
「オプションを積む方向へ舵を切ったのです。こうして妙な演出を切り売りするようになったことが、参列者にとって違和感を覚える葬式になった原因でしょう」(同前)
送る側の意識の変化も影響しているという。
「『こうしたい』というモデルがないので、遺族の間で相談もしません。死の前の医療の段階ではインフォームドコンセントをしっかりするようになってきましたが、死を迎えてからとなるとまだまだです。だから葬祭業者に丸投げしてしまう。
それで、見ず知らずの人に遺体を触らせたり、湯かんをさせたり、それからことさら悲しみをナレーションする演出などが出てしまうのです」(同前)
前出・鵜飼氏も「現代の人には、死者を葬送するという気持ちが薄れています」と指摘する。
「過度な悲しみの演出を提案する業者が増えているのには、その反動としての側面もあります」