国内

東北の広大な樹木葬墓地、あと1万人くらいの空きアリ

墓地というよりハイキングコース。「生きもの浄土の里」の樹木葬

 そこはお墓でありながら、墓石も写真もない。あるのは雄大な自然と、年々育つ樹木だけ。 昨今、「室内墓」とともに新しい埋葬の形として「樹木葬」が大きな注目を集めている。しかし、その内容はさまざまなことをご存じだろうか。ノンフィクションライターの井上理津子氏は、樹木葬の名付け親の待つ東北へと進路を取った。

 現在の樹木葬は、大きく分けると里山タイプ、公園タイプ、庭園タイプの3つ。しかし、故人の名前を記すプレートの有無など、細分化をするとその種類は多様で数えると100種以上あるという。

 * * *
 日本で初めて樹木葬を始めたのは、岩手県一関市の臨済宗・祥雲寺というお寺だ。1991年のことだという。樹木葬墓地を管理する祥雲寺の子院・知勝院が宗教法人として認可された2006年以降は知勝院の経営とのことで、そちらへ向かった。

 東京から東北新幹線で2時間余り。一ノ関駅で降り、雄大な奥羽山脈の須川岳(栗駒山)を望みながら、タクシーで25分ほど。

 車中、人のいい運転手さんが「つい先日も樹木葬の見学帰りのご夫婦を乗せましたが、大げんかしていました。『気に入った。決めた』ときっぱりと言う奥さんに、ご主人は『遠すぎる。子供が来てくれない』と反対する。『来てくれなくてもいいから決める。あなたが嫌なら、私ひとりで契約する』『それはないだろ』と。そのご夫婦に限らず、女性のほうが決断が早いみたいですよ」と話してくれる。

 走るほどに緑が深まり、知勝院の境内、というか「生きもの浄土の里」と名付けられた里山の中ほどに着いた。目の前に、25mプールよりひと回り大きい池が水をたたえており、その背後に雑木林が広がっている。

 作務衣姿の先住職・千坂げん峰さん(72才・「げん」は山へんに「彦」)が迎えてくれた。挨拶もそこそこに「樹木葬という言葉の名付け親ですか?」と聞くと、「ええ。商標登録をしなかったので、一般呼称のようになっちゃいましたが」と苦笑いされた。

 その日はあいにくの天気だったが、山内を案内してもらった。知勝院の本堂の前から、緑に囲まれた小道を樹木葬のエリアへと進む。その小道がずいぶん歩きやすいと思いきや、「間伐材のチップを敷いているんです」と千坂さん。

「自家製ですか?」
「もちろんです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
グラドルデビューした渡部ほのさん
【瀬戸環奈と同じサイズ】新人グラドル・渡部ほのが明かすデビュー秘話「承認欲求が強すぎて皆に見られたい」「超英才教育を受けるも音大3か月で中退」
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン