ライフ

カールが生まれた時代、酒の肴としても提案されていた

販売中止で駆け込み人気の「カール」

 スナック菓子「カール」の東日本での販売が8月で終了する。同商品が販売されたのはいまから50年前、それは食の転換期でもあった。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 1968年生まれのスナック菓子「カール」が8月中をめどに生産を大幅縮小し、東日本で終売になると製造元の明治が25日に発表してから一週間が経った。また1970年に発売が開始された同社の「ピックアップ」も8月で終売になる。転換点を迎えているのはスナック菓子なのか、それとも「食」自体がひとつの転機を迎えているのだろうか。この50年で「食」はどのように変化したのか振り返ってみたい。

 まず『日本の食文化史年表』(吉川弘文館)から約50年前、1966(昭和41)年~1968(昭和43)年頃のニュースをざっと振り返ってみると、この頃に現在の日本の食の基礎ができていることがわかる。

 1966(昭和41)年は、1月に東京の高島屋でお国自慢全国うまいもの駅弁大会が、2月には京王デパートにて全国駅弁大会が開催された。9月には低温輸送を可能にしたコールドチェーン制度の導入が開始され、科学技術庁が東京都内にて福島県産低温輸送のきゅうりを実験販売して人気になった。10月には江崎グリコがポッキーチョコレート(60円)を発売。その他、エスビー食品がゴールデンカレー、早川電気工業(現在のシャープ)が家庭用電子レンジ(19万8000円)を発売したのもこの年だった。

 翌1967(昭和42)年は3月に森永製菓が「チョコボール」、9月に「チョコフレーク」(50円)を発売する。4月には東大阪市にて廻る元禄寿司1号店開店、6月にハムやソーセージなどに原料肉の表示が義務化され、立ち食い・ながら食い・ドライブ食いなど食べ方の多様化がみられたのもこの年だったという。また大豆たんぱくを用いた人造肉の本格的な量産が開始されたが、普及はしなかったという。

 では「カール」が発売された1968年はどうか。まず2月に大塚食品工業がボンカレー、ボンシチューを発売。7月ににんべんが削りかつお節のフレッシュパックを発売する。同月、厚生省が牛乳・乳製品の製造年月日表記を義務化する。「カール」が発売されたのは8月19日。10月25日には衆議院物価対策特別委員会にて、大豆たんぱくを使用した人工肉試食会が開催され、ハンバーグやギョウザ、シュウマイなどにて提供されたという。

 いまから50年前は、日本の食様式が明らかに変化した時代だった。わが国における食品群別摂取量の年次推移を見ても、1965年から1970年の5年間は食生活が目に見えて変化した頃だった。魚介や卵類の摂取量は1割以上上がり、肉類、乳類に至っては約4割と驚異的な伸びを見せている。かたや「米・米加工品」の摂取量はは1割以上下がった。日本の食における一大転換期だったのだ。

 人口増にともない代用肉の開発が進み、食品の「インスタント化」「レトルト化」にも火がついた。内食一辺倒から駅弁も含めた中食へと道が開け、食べ方のスタイルも変化した。コールドチェーン(低温流通)の実現化にメドが立ち、直後に黎明期を迎える外食産業にとっての環境も整った。「カール」や「チョコボール」「チョコフレーク」などの「新しい菓子」類が生まれたのは、そんな頃だった。

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン