時に人生には手痛い失敗や深い後悔も伴う。それでも人を癒やせるのは、やはり人――。そう思わずにはいられない58才・主婦の実話エピソードをご紹介。
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「早く元気になってね」
「また来るね」…。
夫は海外赴任中で、見舞いのアテがない孤独な私にとって、大部屋での入院は苦痛でした。どのベッドも、家族の温かい会話で溢れています。いたたまれなくなった私は、カーテンを閉じていました。ところが、そのカーテンを開けてくれた人たちがいたのです。姑と舅でした。 夫とは結婚して20年、ほとんど別居でした。仲が悪いというよりは、夫は海外で仕事をし、私は東京を離れられない。お互いの仕事を優先させるため、自由に暮らすことにしたのです。子供のいない私には仕事だけが生きがいでした。
夫の両親は近くに住んでいるのですが、交流しませんでした。結婚時、「息子が単身赴任なのに大丈夫?」と気遣う姑が同居を提案してくれたのですが、将来、介護にでもなったら、自分の仕事の邪魔になると思い、断ったのです。
ところが50才の時、私の方が先に病に倒れてしまいました。大腸がんでした。しかも、そのせいで会社をリストラされてしまったのです。
病院に1人でいると、働き詰めだった私の人生はなんだったのかと、むなしくなりました。両親は他界し、身内は夫とその両親だけ。そんな彼らにも、冷たく接してきたのだから、自業自得だと思いつつも、寂しさで押しつぶされそうでした。
そんな時、来てくれたのが、姑と舅でした。夫から聞いて、慌てて駆けつけてくれたそうです。
連絡をしなかった私を責めもせず、気を使ってくれます。その上、「退院後は、うちに来たらどう?」と誘ってくれたのです。私は一度、“介護したくない”などという理由で、同居を断ったのに。
夫の両親と同居を始めて数年。姑は認知症になってしまいましたが、恩返しをするつもりで、楽しく介護をしています。
※女性セブン2017年6月15日号