にんにくの歴史は非常に古く、古代ギリシャの歴史家・ヘロドトスの著書『歴史』の中には、「エジプトのピラミッドには、その建築に従事した労働者へ支給したにんにく、玉ねぎ、ラディッシュの金額が記録されている」との記述がある。おそらくは中近東が発祥の地と思われるが、明確にはわかっていない。
日本への伝来については、第十代崇神天皇の時代、朝鮮からの帰化人が済州島よりにんにくを持ち帰ったという記録がある。古事記にはにんにくの利用法が解説されており、万葉集では「ひしおすに蒜つきかねて鯛ねがう 吾にな見せて水葱の羹」(にんにくをすりおろして二杯酢をかけ、その中に鯛をつけて食べると美味)と詠まれ、源氏物語では「雨夜の品定め」で熱冷ましの草薬として用いており、古くから重宝されていたことがわかる。
にんにくが健康食品として珍重される最大の理由は、そのにおいのもとである成分・アリシンによる強力な抗菌・殺菌・解毒作用。また、疲労回復に効果のあるビタミンB1、活性酸素を除去するビタミンEをはじめとする豊富な抗酸化物質などにより、病気から体を守り、また治癒を早める薬効の高い野菜である。
初夏に旬を迎えるにんにくについて、家庭料理研究家の松田美智子さんはこう話す。
「私は40年前から、にんにくでみそ床を育てています。漬けるだけで肉や魚、野菜など何でも味がピタッと決まって非常に便利。必要な材料はみそ、酒、にんにくのみです。ぬか床のように毎日混ぜる必要はありませんが、にんにくが減ったら足して、絶えず1玉分ぐらいが入っているようにすると傷みにくいです。長くおいしくいただけますから、みそは質のよいものをお使いください」
【にんにくの準備】
にんにくは丸のままではにおわず、切れ目が入った瞬間からにおい始める。手早い調理が肝要だ。下処理としては、必ずにんにくの中心にある芽を取り除くこと。においのもとであり、調理の際に焦げやすいのもこの部分だ。取らなくても体には害はないが、胃壁を傷つけやすく、体調不良時には逆効果になることもある。
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