◆脆弱な野党に“支えられている”
ただし、「安倍一強」の弊害がないわけではない。内閣に権限が集中し、党内も締め付けが厳しいから無風状態で、官僚も含めみな総理のほうを向いている。“反安倍”は石破茂ぐらいだ。こうした状況は長期的に見れば、安倍政権のためにはならない。北朝鮮や中国など海外の脅威、野党の脆弱さという外的要因に「支えられている」ともいえる。
政権の強さというのは、もっと自由にもみ合い、切磋琢磨したうえで発揮されるものでなければならない。その意味で、次に何か大きな出来事が起こった時、適切な対応ができるかどうかは、例えば「20年までに9条改正」とぶち上げた改憲問題の議論の進め方ではかることができるだろう。
果たして、安倍晋三はカリスマだろうか。かつての田中角栄、小泉純一郎、小沢一郎らに類するカリスマ性はないように見える。それでも、これだけの長期政権を築いた。いわば、「透明なカリスマ」だ。私たちは平成時代の最後に、安倍晋三という新時代のカリスマを見ているのかもしれない。(文中敬称略)
●おおした・えいじ/1944年広島県生まれ。広島大学文学部卒業。『週刊文春』記者を経て1983年独立。政治、経済、芸能、闇社会まで幅広く取材・執筆活動を続けている。『日本共産党の深層』(イースト新書)、『安倍官邸「権力」の正体』(角川新書)ほか著書多数。
※SAPIO2017年7月号