ビジネス

佐川急便も導入の週休3日制 ビジネス上の損失が大きい現実

週休3日で長時間労働が増す恐れも

 ドライバーの人手不足に悩む運輸業界を中心に広がりつつある「週休3日制」。労働日数・時間にメリハリをつけて人材確保をしやすくする狙いや、常態化する長時間労働を是正する目的もあるとみられる。だが、果たして日本企業に定着する仕組みなのだろうか? 人事ジャーナリストの溝上憲文氏が、週休3日制のメリット、デメリットを解説する。

 * * *
「週休3日」の働き方が話題になっている。直接のきっかけは佐川急便の週休3日でのドライバーの募集だ(東京都と山梨県)。

 転職サイトに掲載された同社の募集広告のキャッチコピーは〈「週休3日」で、家族との余暇も収入アップも実現可能〉。その下には、〈水曜お休み。朝から趣味の釣りに出かけて、ゆっくり過ごす。土曜お休み。家族みんなで、日帰り温泉を満喫! 日曜お休み。今日は子どもと一緒に近隣の公園へ。〉という文字が躍っている。

「週休3日」募集の最大の狙いはドライバー不足による人材の確保だ。だが、週休3日といっても労働時間が減るわけではない。普通は1日の所定労働時間が変わらずに休みが1日増えることをイメージするが、そうではない。

 同社の週休2日のドライバーの実働時間は1日8時間、5日勤務で週40時間。週休3日の場合は、1日8時間の法定労働時間の例外を認める「変形労働時間制」を使って1日の労働時間を10時間にして同じ40時間にするものだ。

 もちろん1日の労働時間が8時間を超えても残業代がつくことはなく、週の労働時間を4日に固めただけの話だ。働き方の選択肢が増えることは結構なことだが、この仕組みでドライバーが集まるかどうかは微妙だろう。

 そもそも運送業界は残業を前提として成り立っている。社員も残業代を当てにして生活設計をしている人も多い。

 同社のドライバーの基本月給は、週休2日も3日もほぼ同じ「18万~26万円」(関東地区)。募集広告には週休3日の月収例として「26万5924円~35万5057円」(東京、残業手当20時間)と、わざわざ残業代込みの給与を紹介している。

 週休3日の月の勤務日は17日。1日1時間ちょっとの残業時間になる。実働10時間といっても間に1時間の休憩時間があるから通常の拘束時間は11時間。残業込みの月収をもらうには1日計12時間拘束される。仮に9時始業の会社であれば21時に帰宅することになる。しかもシフト制なので週の真ん中に休めるとは限らない。

 週4日連続で働き、3日の休みがあるといっても、労働実態を考えると1日は家でぐっすりと寝ていたい気分になるかもしれない。冒頭の募集広告にあるような“優雅な3日間”を過ごすことができるのか疑問ではある。

関連キーワード

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン