──日本では国民が立ち上がらない。どこが違うのか。
小沢:国民が行動する国というのは、大陸の諸国に多い。歴史的に大陸諸国は戦争に負ければ、男はみんな殺され、女は奴隷になる。そういう歴史だった。幸い日本は島国で敵国に殺されることはないから、丸く丸くなる。和をもって社会の輪の中でおとなしくしていれば、殺されることはない。
──殺されるほどの危機にならないと「空気」は変わらないということか。
小沢:基本的にはそう思う。大きな危機が起きないとね。でも、日本人は本当の危機を経験してないから、いざ直面すると直情的な行動を起こしてしまう心配もある。戦前の昭和史を見ても、日本のやり方っていうのは「ここまで来たんだから引き返せない。お国のために突っ込め」となっちゃう。だから難しい。しかも安倍さんが夢見ているのは大日本帝国だからね。
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日本人の行動様式に関する鋭い思索で知られた故・山本七平氏の名著『「空気」の研究』は、〈「空気」とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である〉と書き、日本社会がその妖怪に呑み込まれて自律的な判断ができずに、泥沼の戦争に突入していった現象を読み解いてみせた。山本氏は、それを防ぐにはどこかで国民に冷水をかけ、現実を直視させることが必要と説いた。
野党に国民の目を覚ますことができないなら、自民党に「第2の小沢」が現われて党を割るか、あるいは野党が全部与党になって、そこから大分裂が起きるしかないのではないか。小沢氏にそうぶつけてみた。