ナベプロのピン芸人が一発屋で終わりにくいもう1つの特徴は、“促成栽培”であること。ブルゾンちえみさんは現在芸歴2年目の26歳ですし、あばれる君は芸歴5年目の27歳、厚切りジェイソンさんは何と芸歴4か月の28歳でブレイクしました。
さらに、平野ノラさんもデビューが遅いため現在38歳ですが、まだ芸歴6年目の若手。思えばイモトアヤコさんは、芸歴2年目の21歳で『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)のレギュラーを勝ち取りました。
他事務所と比べると明らかにブレイクの時期が早く、フレッシュさや勢いを強みにしているのです。そんな早期ブレイクに一役買っているのは、同社が運営する『ワタナベコメディスクール』。養成所の段階から早期ブレイクを目指して「どのキャラとネタでいくのか?」を考え、可能性のある生徒と契約し、テレビ局への売り込みだけでなく自社制作の番組に出演させるなど、早めに脚光を当てているのです。
彼らは若く芸歴が浅い分、お世辞にもトーク力があるとは言えません。しかし、無理にうまいことを言おうとするのではなく、自然体のリアクションを押し出すことで、前述したような「若いから素直で一生懸命」と人の良さを感じさせています。
余談ですが、私が何度か芸人同士の飲み会に参加したとき、ムチャ振りからのボケ合戦や大喜利がはじまることがありました。すると、よしもとや人力舎の芸人は次々に言葉を発していきますが、ナベプロの芸人が繰り出すのは表情や仕草。耳よりも目に訴えかけるようなイメージで笑わせようとするのです。
たとえるなら、「話術を競うM-1ではなく、キャラの濃さを競うR-1狙い」というスタンス。だから、「多くのテレビ番組からオファーを受けやすく、番組内のワンコーナーでも使いやすい」ピン芸人を重点的に養成しているのでしょう。
もともとITビジネスマンの厚切りジェイソンさんが土日を使って『ワタナベコメディスクール』に通っていたように、応募資格は15~45歳と門戸は広く、養成所の段階から早期ブレイクを意識しているのは間違いありません。一部で「タレントの使い捨て」「しっかり育てていない」などの批判も見られますが、他事務所のような「アラフォーになってようやくテレビに出られるようになった」と自虐話をする芸人ばかりなのもおかしい気がします。
◆芸風を生かしつつ活動の幅を広げる