お墓の問題は、「どこに入るか」ともう1つ、「誰と入るか」ということも根深い悩みだ。夫や、夫の両親とは、死んだ後まで一緒は嫌。死後は「女性だけ」がいいと、女性専用の共同墓を選ぶ女性たちがいる。それは、「女性だから」という理不尽な理由で家のお墓に入れなかった人の救いにもなるはず…。
NPO法人スノードロップ(埼玉県坂戸市)が運営する埼玉県鳩山町の真言宗・妙光寺内にある女性専用共同墓「なでしこ」と、東京都府中市の「府中ふれあいパーク」に2000年、NPO法人SSSネットワーク(東京都新宿区)が建てた「女性のための共同墓」を取材したノンフィクションライター・井上理津子氏が、リアルなお墓問題をリポートする。
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大阪市北区に住む前川知佐子さん(72才・仮名)。インタビュー中、「自虐的に言いますと、私は『行かず後家』です」と笑ったが、目は笑っていなかった。
前川さんは、兄と妹のいる3人きょうだい。兄も妹も40年以上前に結婚で家を出たが、前川さんは未婚のまま実家に暮らし続けた。「結婚したかった人がいなかったとは言いませんが、ご縁がなかったから。と、聞かれてもいないことを自分から言って、アホですね」。そう言ってから、先の「自虐的に言いますと…」と続けたのだった。
さて、お墓の話。母についで父が他界した5年前、前川さんは菩提寺の住職に「あなたは女だから、前川家の墓に入れない。お兄さんに継いでもらう」と言われたのだという。
「理不尽でした。仏壇はうちにあるし、お墓参りに行っているのも私なのに。でも、お寺さんは『決まりだから』の一点張りでした」
争うのが嫌で、前川さんは折れた。「かわいそうな子」と思われるのがつらくて、兄にも妹にも相談しなかった。
自分1人用に、菩提寺が勧めた、同じ宗派の本山のロッカー式墓を求めたのだという。
「17年で合祀されるという契約のお墓です。女1人って、こんな目に遭わなければいけないのかと、情けなくて情けなくて…」
誰か相談する相手はいなかったのかと尋ねると、「こんなみっともないこと、相談できないじゃないですか。私にもプライドがありますから」。
どうにも腑に落ちない――と私は思う。スノードロップとSSSネットワークの女性専用共同墓の情報を前川さんに伝えたが、「私には別世界ですね」と興味を示されなかった。
文・写真/井上理津子(ノンフィクションライター)
※女性セブン2017年6月29日・7月6日号