国内

「女だから家の墓には入れない」独り身女性の厳しい現実も

「スノードロップ」の女性共同墓「なでしこ」

 お墓の問題は、「どこに入るか」ともう1つ、「誰と入るか」ということも根深い悩みだ。夫や、夫の両親とは、死んだ後まで一緒は嫌。死後は「女性だけ」がいいと、女性専用の共同墓を選ぶ女性たちがいる。それは、「女性だから」という理不尽な理由で家のお墓に入れなかった人の救いにもなるはず…。

 NPO法人スノードロップ(埼玉県坂戸市)が運営する埼玉県鳩山町の真言宗・妙光寺内にある女性専用共同墓「なでしこ」と、東京都府中市の「府中ふれあいパーク」に2000年、NPO法人SSSネットワーク(東京都新宿区)が建てた「女性のための共同墓」を取材したノンフィクションライター・井上理津子氏が、リアルなお墓問題をリポートする。

 * * *
 大阪市北区に住む前川知佐子さん(72才・仮名)。インタビュー中、「自虐的に言いますと、私は『行かず後家』です」と笑ったが、目は笑っていなかった。

 前川さんは、兄と妹のいる3人きょうだい。兄も妹も40年以上前に結婚で家を出たが、前川さんは未婚のまま実家に暮らし続けた。「結婚したかった人がいなかったとは言いませんが、ご縁がなかったから。と、聞かれてもいないことを自分から言って、アホですね」。そう言ってから、先の「自虐的に言いますと…」と続けたのだった。

 さて、お墓の話。母についで父が他界した5年前、前川さんは菩提寺の住職に「あなたは女だから、前川家の墓に入れない。お兄さんに継いでもらう」と言われたのだという。

「理不尽でした。仏壇はうちにあるし、お墓参りに行っているのも私なのに。でも、お寺さんは『決まりだから』の一点張りでした」

 争うのが嫌で、前川さんは折れた。「かわいそうな子」と思われるのがつらくて、兄にも妹にも相談しなかった。

 自分1人用に、菩提寺が勧めた、同じ宗派の本山のロッカー式墓を求めたのだという。

「17年で合祀されるという契約のお墓です。女1人って、こんな目に遭わなければいけないのかと、情けなくて情けなくて…」

 誰か相談する相手はいなかったのかと尋ねると、「こんなみっともないこと、相談できないじゃないですか。私にもプライドがありますから」。

 どうにも腑に落ちない――と私は思う。スノードロップとSSSネットワークの女性専用共同墓の情報を前川さんに伝えたが、「私には別世界ですね」と興味を示されなかった。

文・写真/井上理津子(ノンフィクションライター)

※女性セブン2017年6月29日・7月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン