国内

最弱省庁・文科省のルサンチマンが爆発した「前川の乱」

「前川の乱」は「文科省の乱」

 前代未聞のクーデターと称される前川喜平・文部科学省前事務次官(62才)による告発劇。学校法人「加計学園」(岡山市)の獣医学部新設をめぐる問題は、前川氏の出会い系バー通いに話がすり替わった矢先、当初官邸が全否定した「総理のご意向」を暗示する内部文書が発見されるなど、二転三転。騒動はいまだ着地する気配を見せない。

 権謀術数がうごめく霞が関にあって、今回の前川氏のクーデターが大きな意味を持つのは、「文科省の反乱」であることだ。

 中央省庁には、揺るぎがたきヒエラルキーが存在し、文科省は省庁の最下層に位置する。“安倍一強”といわれ、霞が関が永田町にひれ伏すなか、最弱の省庁が最強の官邸にたてついたことになる。

「絶大な権力を誇る財務省なら政権にくっついていれば必ず“うまみ”を得ることができるので反乱を起こす必要はありません。しかし文科省は官邸の後ろ盾もなく、霞が関での地位は低い。今回の文科省の反乱は、虐げられた者たちによる反逆だといえます」(全国紙記者)

 前川氏は今年1月、文科省天下り斡旋問題の責任を取る形で事務次官を事実上更迭させられたばかり。東大法学部を出て文科省に入ったのち、省庁間の階級差別に苦しみながらも勝ち抜いた出世競争。だが、その果てに待っていたのは、汚れた晩節だった。

「いわば、霞が関の清濁全てを併せのんだ人間です。いびつな権力ピラミッドを目の当たりにし、憤りを感じることも多かったといいます。一方で自らも権力闘争の末に事務次官の座を手に入れた。そして今、官邸の意向で辞職を余儀なくされただけでなく、自らの聖域である学校法人の許認可を巡り、国のトップが介入し、その事実が闇に葬られようとしている…。これ以上、文科省がなめられるのは我慢ができなかったのでしょう。40年間の霞が関人生でたまったルサンチマンが爆発したのが『前川の乱』だったのです」(前出・全国紙記者)

 一方、元文科省官僚で、前川氏をよく知る寺脇研氏(京都造形芸術大学教授)はこう語る。

「彼は全身全霊で仕事に打ち込むまじめな人物でした。家柄にも恵まれていたけど、そこにあぐらをかくこともなく、子供の教育に真摯に向き合おうとしていた。誰からも好かれる人柄で、女性職員は“マエマエ”なんてあだ名で呼んでいたくらいです。人を蹴落とすのではなく、実力と人望で事務次官になった男です。

 だからこそ、今回彼が会見に出たのは、文科省の後輩たちを守る目的もあったと思うのです。前川さんが事務次官を辞めた後、文科省の職員たちが加計学園に関する資料を出し始めました。でも、このままだと政権に握りつぶされ、後輩たちが官邸に狙い撃ちされかねない。そこで自分が出て行って、矢面に立とうとしたのではないでしょうか」

関連キーワード

関連記事

トピックス

「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
2024年末、福岡県北九州市のファストフード店で中学生2人を殺傷したとして平原政徳容疑者が逮捕された(容疑者の高校時代の卒業アルバム/容疑者の自宅)
「軍歌や歌謡曲を大声で歌っていた…」平原政徳容疑者、鑑定留置の結果は“心神耗弱”状態 近隣住民が見ていた素行「スピーカーを通して叫ぶ」【九州・女子中学生刺殺】
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
9月6日に悠仁さまの「成年式」が執り行われた(時事通信フォト)
【なぜこの写真が…!?】悠仁さま「成年式」めぐりフジテレビの解禁前写真“フライング放送”事件 スタッフの伝達ミスか 宮内庁とフジは「回答は控える」とコメント
週刊ポスト
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン