国内

海洋散骨会社設立の経緯 埋葬等に関する法律への抵触は?

散骨後ひらひらと舞った花びらはやがて海中へ

 さまざまな選択肢がある時代、どのように最期を葬られたいかも多岐にわたる。土に還るのが樹木葬だとしたら、海洋散骨は、海に還るというもの。お墓の悩みを抱えた人たちの間で近年注目を集めるサービスがある。それは、株式会社ハウスボートクラブ(東京都江東区)による海洋散骨サービス「ブルーオーシャンセレモニー」だ。とある日は、5組13人がクルーザーに乗り、東京・羽田沖で合同乗船散骨を行った。なぜ、海洋散骨をしようと考えたのか、その背景をクルーザーに同船したノンフィクションライターの井上理津子氏が迫った。

 * * *
「ゆっくりと青い海に沈んでいく遺骨はきれいで」

 下船して、ハウスボートクラブの社長に会った。村田ますみさん(43才)。女性がなぜ海洋散骨の会社を?とまず知りたい。

「2003年に、私自身が母を沖縄の海に散骨したんです。その体験からです」

 詳しく教えてもらう。

「母は急性白血病になり、9か月間の闘病生活をして55才で他界しました。闘病途中から、私は勤めていた会社を辞めて看病に専念したんですが、母は病床で『お墓には入りたくない。伊江島の海に撒いて』と強い思いを口にしたんです」

 母はダイビングが趣味。父と2人で国内外あちこちに出かけて潜っていたが、特に魅せられていたのが沖縄の離島・伊江島の海だったという。

 村田さんの父は6人きょうだいの末っ子。先祖代々のお墓は父の長兄が継いだが、その人の計らいで、きょうだい全員とその妻が入れるように改修済みだった。つまり、母に家墓は用意されていた。なぜ、そこに入りたくなかったのだろう。

「今となっては、推し量ることしかできませんが、父方の先祖――母にとっては知らない人たちが入っているお墓が『心休まる場所』でなかったのだと思います」

 散骨は、市民団体「葬送の自由をすすめる会」が1991年に「自然葬」として相模湾沖で始めたのが最初とされるが、まだまだ知る人ぞ知る存在だった頃だ。村田さんたち家族は、母の死後1年間、心の整理がつかずに遺骨を手元に置いた後、一部を家墓に納骨し、大多数を伊江島に散骨することにした。

「散骨、沖縄」とネットで検索して見つけた沖縄本島の葬儀社に粉骨とセレモニーを頼み、父母が懇意にしていた現地のダイビングショップのオーナーに船を出してもらった。

「父や妹と伊江島に行き、船から散骨しましたが、ゆっくりと青い海に沈んでいく遺骨はとてもきれいで…。心に空いていた大きな穴が、小さくなっていくのを感じた。その日から前向きに進もうという気力が湧いてきたんですね」

◆クルージング船船長との出会い

 村田さんには、そのとき5才の子供がいたが、後に離婚。シングルマザーとしての暮らしを経て、再婚した。その相手が、クルージング船の船長だという。東京湾でクルーズ船を操船する仕事をしていた彼から、初めてのデートのとき「海洋散骨の仕事もしている」と明かされ、距離が縮まった。タイミングよく売りに出ていた中古クルーザーを購入して、2007年に独立開業したのだそうだ。

関連キーワード

トピックス

物件探しデートを楽しむ宮司アナと常田氏
《祝!結婚》フジ宮司愛海アナ、結婚発表直前に見せていた「常田俊太郎氏とのラブラブ内見デート」 局内では「歩くたびに祝福の声」
NEWSポストセブン
豪華リフォームの要求が止まらない紀子さま(写真/時事通信フォト)
50億円改修工事が終わったはずの秋篠宮邸、はやくも新たな修繕工事の計画がスタート 宮内庁は工事の具体的な内容や価格などは明かさず 
女性セブン
墓に向き合ったTaiga
《桜塚やっくんの墓参りに密着》11回目の命日…女装研究家になった元バンドメンバーTaiGaの告白「やっくんの夢だった『武道館での歌唱』を叶えたい」
NEWSポストセブン
ツアーを終え、ロンドンに戻った宇多田ヒカル(2024年9月)
【全文公開】宇多田ヒカル、新パートナーはエルメスの店舗デザインも手掛けたグラフィックアーティスト ロンドンでひとときの逢瀬を楽しむ適度な距離感 
女性セブン
かつてバンドメンバーだった桜塚やっくんとTaiga(右)
【目の前で目撃】37歳で急逝・桜塚やっくんの命日に元バンドメンバーが墓参り 事故当日の詳細を初告白「悔やんでも悔やみきれません」
NEWSポストセブン
4月クールに『アンチヒーロー』で主演をつとめた長谷川博己
ドラマ『アンチヒーロー』で衣装に関する“200万円請求書”騒動 長谷川博己のオリジナルコート制作費をめぐってスタイリストと制作サイドが衝突か
女性セブン
佐賀空港を出発される愛子さま(時事通信フォト)
雅子さま「午後だけで4回もの休憩」不安視された22年ぶり佐賀訪問で初めて明かした「愛子さまとの私的な会話」
NEWSポストセブン
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司組長だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司若頭だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」
NEWSポストセブン
ドキュメンタリー映画『Screams Before Silence』でインタビューに応じるアミット(映画の公式インスタグラムより)
《55日間のハマス人質日記》囚われた女性が語る地獄の日々「生理の時期を毎日確認されて…」【音楽フェス襲撃から1年】
NEWSポストセブン
10月8日、美智子さまは「右大腿骨上部の骨折」の手術を受けられた(撮影/JMPA)
美智子さま「大腿骨の上部骨折」で手術 待ち受ける壮絶リハビリ、骨折前より歩行機能が低下する可能性も
女性セブン
東北道・佐野サービスエリアの現在とは
《前代未聞のストライキから5年》激変した東北道・佐野SA「取り壊された店舗」名物「佐野らーめん」の現在、当時の元従業員が明かした39日間の舞台裏
NEWSポストセブン
カニエ(左)とビアンカ・センソリ(右)(Getty Images)
「ほぼ丸出し」“過激ファッション”物議のビアンカ・センソリが「東京移住計画」ラッパーのカニエ・ウェストと銀座に出没、「街中ではやめてくれ」の指摘も
NEWSポストセブン