描かれた背景にある物語に想像をかきたてられるのが、謎の多いフェルメールの作品の中でも最もミステリアスな作品とされる『真珠の耳飾りの少女』と、ナチス・ドイツの台頭を機に数奇な運命をたどることになったクリムトの最高傑作『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像I』だ。
「フェルメールが描いたあの少女が誰なのか、諸説はあるもののはっきりしたことはわかっていません。また、クリムトの裕福なパトロンだったオーストリアの実業家が依頼した妻の肖像画『アデーレ』は、日本美術の表現が取り入れられた豪華絢爛の一言に尽きる作品。悲しい歴史と熾烈な法廷闘争を経て、現在、ニューヨークの個人美術館ノイエ・ガレリエが所蔵、展示しています」
天才ピカソさえ思いつかなかった手法をやってのけたのが、アメリカの画家ジャクソン・ポロック。金字塔の『Number 1A,1948』を原田氏が説明する。
「自分だけの絵画手法を探求し、“何か新しいことをやろうと思うと、必ずピカソがやってしまっている”と苦悩していた彼は、ついにやり遂げます。それまでの画家がイーゼルや壁などに立てかけていたカンヴァスを、そこから引き剥がし、床に寝かせ、絵筆から絵の具を垂らして“俯瞰した世界”を表現した最初のアーティスト、作品となりました」
◆現地で作品を見ることの意味とは?
今回紹介した作品はどれも美術館に展示されており、現地に行けば見られる。原田氏が読者に伝えたいのは、「本を読んで満足しないでほしい」ということだ。