──非難や人間関係のこじれを恐れて、本音を隠すのはナンセンスということですね。
「むしろみんなが本音で言えば、それが普通になり、揚げ足を取る人もいなくなります。そしてそれまで揚げ足取っていた人も本音を言うしかなくなるでしょう。不寛容な時代なんていうのは自分たちが作っているんです。
今のこの雰囲気、何かに似ていると思いません? 第二次世界大戦中の日本ですよ。当時は口紅つけてスカート穿いたら非国民扱いでした。戦地の兵隊さんはどう思っているか?と。『いちいちうるせえ。そんなの知るか』とでも言おうものなら殴る蹴るですよ。
今の世の中、そういうことが言えないのは、みながそういう空気を自ら作っているということ。佐藤さんはそんな時代をよく知っているから、今さら細かいことなんて気にしていないと思いますね」
──自制せず、もっと自由になろう、と。
「とは佐藤さんは口に出さないけれど、気分としてはそうでしょうね。こういう世の中を作っているのはあなたたちだというのを、間接的に伝えていると思います。佐藤さんのように、みんなが言いたいことを言って暮らせばいいと思いますよ」
──養老さんご自身は言いたいことを言えていますか?
「言いたいことを言って暮らしていると思われているようですね。極端なことを言うってよく言われますよ。原稿にも言いたいことを書いてます。ただ、これを書いたら編集者が赤字を入れてくるだろうなと思うところにはちゃんと赤字が入りますし、編集の人に迷惑をかける気はないから、削りますけどね(苦笑)」
※女性セブン2017年7月20日号