だがその日。ビール代の300円をねだり、散歩から一足先に帰宅した長吉は、翌日大根と煮るつもりだった生のイカを喉に詰まらせ、唐突に逝ってしまうのだ。

「最期のことはお話ししたくありません。ここに書いたことが全てですから……」と、俄かに表情を硬くした高橋氏は、その最期の場面を「手にお数珠を巻いて」どうにか書き上げたという。書くことで結ばれた2人は、やはりこの2人でなければならなかったのだ。

【プロフィール】たかはし・じゅんこ/1944年千葉県飯岡町(現旭市)生まれ。東京大学文学部卒。出版社勤務を経て、1987~1998年書肆とい主宰。1998~2005年法政大学非常勤講師。1990年『幸福な葉っぱ』で現代詩花椿賞、1997年『時の雨』で読売文学賞、2000年『貧乏な椅子』で丸山豊記念現代詩賞、2014年『海へ』で藤村記念歴程賞と三好達治賞。他にエッセイ集『水のなまえ』や小説『緑の石と猫』等。162cm、O型。「長吉はA型だったと聞いています」。

■構成/橋本紀子 ■撮影/国府田利光

※週刊ポスト2017年7月14日号

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