ビジネス

解体進む東芝 虎の子の半導体事業売却を妨げる「因縁」

法的整理はなんとか避けたい東芝だが…(綱川智社長)

 白物家電や医療など次々と事業売却をしながら、何とか生き延びる道を模索してきた名門・東芝だが、ついに「破綻」の二文字も現実味を帯びてきた──。

 いま、経営再建の切り札とされているのは、稼ぎ頭の半導体メモリー事業の売却だ。なにしろ今期末で5000億円超の債務超過に転落する見通しの東芝にとって、上場廃止はおろか経営破綻の危機を回避するためにも、まとまった穴埋め資金が必要になる。そこで、世界2位のシェアを誇り、2兆円規模の価値はあるといわれるNANDフラッシュメモリー事業の売却を急いでいるというわけだ。

 だが、その売却交渉は混迷を深めるばかり。東芝が優先交渉先に選んだ「日米韓連合」の足並みがまったく揃っていないからだ。

 近著に『東芝崩壊 19万人の巨艦企業を沈めた真犯人』がある経済ジャーナリストの松崎隆司氏が指摘する。

「東芝再建は経済産業省が中心となって進めており、日本のお家芸である半導体の技術流出を阻止すべく、官民ファンドの産業革新機構や日本政策投資銀行などを使って“オールジャパン”でメモリー事業を買収する予定でした。

 ところが、半導体事業は巨額の投資が必要なうえに景気サイクルが早く、意思決定の遅い日本企業には荷が重い。過去にはNECや三菱電機など日の丸企業の半導体事業を統合させた『エルビータメモリ』が事実上破綻した歴史的な経緯もありますからね。

 そこで、入札を行い米投資ファンドのベインキャピタルや韓国のメモリー大手、SKハイニックスも加えたコンソーシアムをつくったわけです。でも、投資家から預かった資金で高い利回りを確保して株を売り抜けたい米投資ファンドや、カネを出すからには技術も欲しい韓国メーカーなど、“同床異夢”の企業が集まってうまくいくはずがありません」

 もっとも、韓国のSKハイニックスは当初「あくまで融資主体で議決権を持つつもりはない」と説明してきたが、日米韓の合意書の中には経営に参画できる33%の株式を取得するオプションが含まれていたという。

 こうした動きに反発を強めているのが、東芝と半導体事業で提携関係にある米ウエスタン・デジタル(WD)だ。ライバルでもあるSKハイニックスが東芝メモリー事業の買収に関与しないよう、国際仲裁裁判所に提訴。さらには、米カリフォルニア地裁に売却刺し止めを求める仮処分まで請求した。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト