北京市内で国際経済を専攻する、河北省定州市出身の大学院生は話す。魅力も特徴もない田舎町の国家級新区への指定は、多くの現地の人々にとって青天の霹靂だったという。
ちなみに中国では従来、重点的な経済開発地域として、深センなど「経済特区」6か所と、上海の浦東地域などの「国家級新区」18か所が指定されてきた。ただ、深センと上海以外はパッとせず、他の一般の都市との明確な区別はほぼないに等しい(例えば内陸部の貴州省や甘粛省にも国家級新区があるが、掛け声倒れに終わりつつある)。
だが、今回の雄安新区について、国営通信社の新華社は他地域との相違点を強調。国務院(内閣に相当)のみならず「習近平同志が核心」の党中央も批准する一大国家事業であると主張している。
「現時点では人口も少なく、何もない場所だ。だが、それゆえにゼロから都市を設計できるだろう」
北京の大手紙の関係者はこう嘯いた。中国経済を背負う深センや上海と同格の先進地域を、習近平が新たに生み出すというのだ。
ただ、多数の衛星都市を従える深センや上海と異なり、首都・北京の周辺は「環首都貧困圏」と呼ばれる地域だ。例えば河北省には住民平均年収が2300元(約3万7000円)にも満たない村が3700村以上、同様の県が30県以上も存在する。雄安新区は、この「貧乏ベルト」のまっただなかに建設されることとなる。