「京都の人は祇園祭にクラウドファンディングを採用したり、結構“新しもん”好きですよね。自分たちの本質は守った上で、いいものは取り入れるというか。

 本書でも、新しい経営スタイルを模索して生き残りを図る紺田屋と、祖父母が守ってきた町家を手放したくない若葉では出す答えも違う。ただ、季節や時間の流れを生活の中に取りこみ、時代に流される部分と流されない部分が共存する京都では、その時々の今の積み重ねが、町を形作ってきたのも確かなんです」

〈ええか、うちらはお客さんにとっては京都の顔なんや〉と妙は言うが、最近は紗良のように京都出身以外の舞妓や芸妓も増え、「京都らしさ」とはつまるところ、出自より覚悟の問題だった。その伝統や格式は常に今を生きる個人の葛藤や精進に下支えされ、若葉や紗良や慎太郎の不器用で等身大な成長があってこそ、京都は京都であり続けるのだろう。

【プロフィール】なかむら・りさと/「実は本名です」。1986年福井市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、京都市内の出版社に勤務。高校時代に小説を書き始め、社会人になり執筆を再開。「大学時代、文才がないと言われて、だったら才能のある人を手伝う仕事に就こうと思ったんですけど、私、集英社は書類で落ちたんですよ。その集英社からデビューするなんて面白いですよね」。2014年『砂漠の青がとける夜』で第27回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。160cm、A型。

■撮影/国府田利光 ■構成/橋本紀子

※週刊ポスト2017年7月21・28日号

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