国内

「世界一忙しい」――公立学校教師の長時間労働改善の激論

檀上右から馳浩氏、工藤祥子氏、尾木直樹氏、神津里季生氏、樋口修資氏。

 尾木ママこと教育評論家の尾木直樹氏が「教員が受け持つ授業数は増える一方、報告書づくりなどの事務仕事も増える一方なのに、教員の数は増えていない。その結果、長時間労働を強いられているんです。教員の仕事は子どもたちを明るい未来に導くことなのに、疲れ切った状態ではとても無理。教員の勤務時間にも上限規制が必要です」と教員の長時間労働の一刻も早い解決の必要性を訴えた。

 7月25日、教職員の働き方改革推進プロジェクト/一般社団法人社会応援ネットワーク主催によるシンポジウム「教職員の働き方を考える~学校にも働き方改革の風を~」が開催された。

 2016年9月、政府による「働き方改革実現会議」が設置され、民間労働者には罰則付きの時間外労働規制が設けられたものの、「世界で一番忙しい先生」と呼ばれる公立学校の教員は上限規制の例外とされている。

 そうした状況の中、シンポジウムの会場となった千代田区のプレスセンターホールには教職員、学生、研究者ら約250人が参加し、熱い議論に聞き入った。

 教職員の長時間労働を改善するために今、とるべき手段は何なのか? ファシリテーターを務めた樋口修資明星大学教授の「過労死ラインに当たる月100時間(持ち帰り残業時間を含む)以上、時間外労働をしている教員の割合は小学校で55.1%、中学校で79.8%、高校では46.4%に達しています(連合総研調査)。過労死基準を超えて働くことが学校の常識になっている。これが大きな問題であることを今日のシンポジウムで共有したいと思います」といった報告から、教員の長時間労働の深刻さが伝わってくる。

 元教員で、2007年に教員の夫をなくし公務上災害認定を得るまでに5年6カ月(審査請求から2年5カ月)を要した経験をもつ工藤祥子氏は「教員の仕事とはそもそも何なのか? 死んでもやらなければいけないものなのか? 教員は聖職に奉ずる者でなく、それぞれが生活と家族のある労働者だという意識をもってもらいたい。労働時間を管理することから始めてください」と力説した。

 馳浩衆院議員・前文科大臣は「教員の定数改善と部活動指導員などの外部人材の活用、そして教員に時間外勤務手当が支払われないことを定めている給特法の修正も必要でしょう。教員のモチベーションを保つための策について法律を含めて政府と話しているところです」と教員の長時間労働是正への道筋を示した。

 神津里季生日本労働組合総連合会(連合)会長は、「働き方改革実現会議」の民間議員である立場から「今、教員の長時間労働の問題に光が当たっています。このチャンスをつかんで離さないという覚悟で取り組むことが重要です。議論だけでなく、改革を本物にしていかなければ。教員を含むすべての労働者を対象にした労働時間の上限規制と勤務間インターバルによる休息時間の確保が第一歩になるでしょう」と提唱した。

 シンポジウムは樋口教授の「このシンポジウムを改革の始まりとして、教職員の数、業務内容の整備、中長期的には給特法の見直しも見すえつつ、知恵を出し合ってワークライフバランスを実現していきたいと思います」という会場への呼びかけで締めくくられた。

■撮影/長谷川博一

関連キーワード

関連記事

トピックス

不倫が報じられた錦織圭、妻の元モデル・観月あこ(時事通信フォト/Instagramより)
《結婚写真を残しながら》錦織圭の不倫報道、猛反対された元モデル妻「観月あこ」との“苦難の6年交際”
NEWSポストセブン
国民民主党から参院選比例代表に立候補することに関して記者会見する山尾志桜里元衆院議員。自身の疑惑などについても釈明した(時事通信フォト)
《国民民主党の支持率急落》山尾志桜里氏の公認取り消し騒動で露呈した玉木雄一郎代表の「キョロ充」ぷり 公認候補には「汚物まみれの4人衆」との酷評も出る
NEWSポストセブン
永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《永野芽郁に新展開》二人三脚の“イケメンマネージャー”が不倫疑惑騒動のなかで退所していた…ショックの永野は「海外でリフレッシュ」も“犯人探し”に着手
NEWSポストセブン
“親友”との断絶が報じられた浅田真央(2019年)
《村上佳菜子と“断絶”報道》「親友といえど“損切り”した」と関係者…浅田真央がアイスショー『BEYOND』にかけた“熱い思い”と“過酷な舞台裏”
NEWSポストセブン
「松井監督」が意外なほど早く実現する可能性が浮上
【長嶋茂雄さんとの約束が果たされる日】「巨人・松井秀喜監督」早期実現の可能性 渡邉恒雄氏逝去、背番号55が空席…整いつつある状況
週刊ポスト
発見場所となったのはJR大宮駅から2.5キロほど離れた場所に位置するマンション
「短髪の歌舞伎役者みたいな爽やかなイケメンで、優しくて…」知人が証言した頭蓋骨殺人・齋藤純容疑者の“意外な素顔”と一家を襲った“悲劇”《さいたま市》
NEWSポストセブン
6月15日のオリックス対巨人戦で始球式に登板した福森さん(撮影/加藤慶)
「病状は9回2アウトで後がないけど、最後に勝てばいい…」希少がんと戦う甲子園スターを絶望の底から救った「大阪桐蔭からの学び」《オリックス・森がお立ち台で涙》
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《浅田真央と村上佳菜子が断絶状態か》「ここまで色んな事があった」「人の悪口なんて絶対言わない」恒例の“誕生日ツーショット”が消えた日…インスタに残された意味深投稿
NEWSポストセブン
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン