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台湾独立に賭けた男たちの熱き生き様

 王育徳は「言語が滅びるときは民族が滅びる」という信念から台湾語教育の普及と独立運動に生涯を捧げ、1985年に61歳という年齢で亡くなる。

 王明理によれば、王育徳は心臓に異常があり、医師から精密検査を受けるよう警告を受けていたが、独立運動の国際会議の準備のため治療を先延ばしにしていた。 「亡くなる直前、パパは疲れたなあ、でもママに言わないでね、ガミガミ言われるからって言われたんです。止めておけばよかったって今でも思います」

 遺品を整理すると、王育徳の未発表の自伝が見つかった。日本逃亡までの人生を詳細に記していた。母に聞くと、40歳ごろの王育徳が書いたもので、母や伯母に「若いのに自伝は早すぎる」と発表を止められたものだった。

 王明理が整理し、出版する役割を負った。自分で戦後部分を書き足し、『「昭和」を生きた台湾青年』(草思社)などの出版にこぎつける。筆まめの王育徳が残した膨大な資料の整理はなお続き、本格的な伝記を改めて執筆中だ。

 亡き父の姿を追いながら、独立運動に深く関わるようになった王明理は、半ば困ったような、半ば嬉しそうな表情で、こんな感慨を漏らす。

「委員長は2年だけ引き受けてほしいという話でしたが、もう6年ですね。この30年、ずっと父から出された宿題をやっている気がします」

 生前に台湾の民主化を見届けることはなかったが、王育徳が育てた人々は、日本社会で台湾の名前を堂々と使いながら第一線で活躍した。台湾の存在と主張を日本で広げながら、安倍晋三ら保守政治家との密なパイプを築いた。

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