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台湾独立に賭けた男たちの熱き生き様

 当時の香港は台湾から自由に出入りできた。日本には貨物船を使って密航などで渡った。台湾→香港→日本という逃亡ルートはグー・クワンミンも使った。邱永漢はグー・クワンミンとも親しく、ほぼ同じ時期に3人は日本に渡っている。

 邱永漢は、王育徳の兄の悲劇を「検察官」という小説にして発表したが、王明理によれば、邱永漢は王育徳に無断で発表してしまったようだ。野心家の邱永漢らしい話だが、王育徳はあえて咎めようとせず、2人の個人的な関係は変わることはなかった。邱永漢はのちに台湾の蒋介石政権に「帰順」し、王育徳らが立ち上げた独立運動と袂を分かつ。

 地道に台湾独立理論の構築に励んだ王育徳のもとには、現在評論家として活躍する金美齢や、作家の黄文雄、駐日台湾代表を務めた許世楷、昭和大学教授を務めた黄昭堂(故人*注5)など、日本社会で後に活躍するキラ星のような人材が、その理想家肌で温厚な人柄を慕って集った。

(*注5:黄昭堂/1932~2011年。台南生まれ。台湾大学を卒業後、1958年に日本に留学し、台湾独立運動の中心に立ちながら、『台湾総督府』『台湾民主国の研究』などの著書を残した。1992年に台湾に戻り、台湾独立建国連盟の主席につく。2004年の総統選で、全島の支持者が手をつなぐ「手牽手」の運動を呼びかけ、不利とされた陳水扁の戦況を覆し、僅差での勝利につなげた。)

 王育徳は一時、連盟から研究のために遠ざかり、その穴を埋めたのがグー・クワンミンだった。

 1969年には連盟の若者たちが首をそろえて王育徳のもとを訪ねた。「運動に戻って我々を助けて欲しい」。深々と頭をさげた面々の姿を、幼い日の王明理はよく覚えている。

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