米・合衆国憲法修正第25条には「権力の空白」を防ぐため、大統領が職務遂行不能に陥った際の対処法が定められている。WHMUにはその判断を議会に助言する極めて重い責任があるのだ。
手術時、ロナルド・レーガン大統領は全身麻酔をかけられ、その後も集中治療室で治療を受けていた。一時的ではあるが、他者とのコミュニケーションがとれない状態だったのだ。いかなる理由があれ、大統領が職務遂行不能に陥る事態はWHMUにとって最も不名誉なことだ。
1997年、ビル・クリントン大統領が大腿四頭筋腱の修復手術を受けた際、主治医のエレナー・マリアーノ氏が全身麻酔を避け脊髄麻酔を使ったのも、第25条の適用を避けるための苦肉の策だった。
そしてこの手術では、マリアーノ氏を悩ませるもう一つの事態が起きた。
クリントン大統領が、手術から4日後にヘルシンキで予定されていた露・エリツィン大統領との会談を強行すると言い出したのだ。通常であれば当然、安静を要するところだが、マリアーノ氏はぎりぎりのところで譲歩して認めざるを得なかったという。
クリントン大統領は1998年にも血栓と動脈瘤の入院治療を拒み、主治医と専門医を困惑させた。結局この時は外来治療で合意したが、わがままを言うクリントン大統領には相当、手を焼いたようだ。