この日は会えなかったが、昭和の頃から通っている60代、70代の常連さんも何人もいて、何かの拍子にここから1㎞圏内にあったプロ野球ロッテの本拠地、川崎球場のエピソードで盛り上がることがあるという。
「例えば伝説の10.19(昭和63年)ですよ。近鉄がダブルヘッダーでロッテに連勝すれば優勝だったけど、2試合目を引き分けちゃってダメだったやつね。観客の少なさで有名だった球場が超満員ですごい騒ぎだった話、聞いてますよ」(50代、製造業)
常連にまじってカウンターの奥に、若手サラリーマンのグループがいた。
「一応、昭和生まれですけど、顔を出してまだ2~3年目の若手ですから、その川崎球場の話はわかりません。でも、ここは好きですね。扉がなくてこの暖簾でしょ。屋台感覚で出入りできるのに、入ってみると中は酒の棚やカウンターに囲まれている。この穴倉で飲んでる感が、なんかとってもいいんですよね」(30代、不動産業)
そんな藍色の暖簾の向こうで好んで飲まれているのが 焼酎ハイボールだ。
「もう何年も前から飲んでいるけれど、甘くないし、飲みやすい。いつ飲んでもうまいのもうれしいよね」(50代、土木設計修理)
カウンターでは、好美夫人が陽気に常連の相手をしている。
「私が大学生のころに、同い年の彼女に出会ったはず・・・だったんですが、実は同じ小学校に通っていたことが後でわかって。クラスが多かったので当時は全然知りませんでした(笑い)。私は婿養子でここはかみさんの実家。経営が厳しい時期もありましたが、彼女の育った店を潰すわけにいかないと、頑張りました。もう少し本格的な角打ちの店にして、あと20年はしっかりやるつもりです」(小澤さん)