A子さんは受診した大学病院の医師から、「国内での治療はムリだが、費用さえ出せれば海外で移植できる」と米国にある総合病院への渡航を勧められた。
肝臓移植は心臓より安く6000万~8000万円が相場とされる。A子さんは夫が会社経営者のため経済力があり、日本円で8000万円のデポジットを振り込んで海を渡った。
病院に併設するホテルの宿泊費1泊15万円など、割高の渡航費と滞在費はすべて自前で、もちろん保険は利かない。2週間後にドナーが見つかったとの連絡が入り、すぐに行われた移植手術は無事成功して一命を取り留めた。
実はこの時、A子さんはデポジットの他に「研究費」名目で3000万円を病院に支払っており、移植費用は総額1億5000万円だった。米国では患者がこうした追加費用を払うことで、待機リストの上位に割り込む例があるという。
こうした“特別待遇”は非公開であり一般に知られることは少ないが、時に世を騒がすこともある。
2008年には日本の暴力団組長が米国ロサンゼルスにあるUCLAメディカルセンターで2001年に肝臓移植手術を受けた後、10万ドル(約1100万円)を病院に寄付したと米紙が報じた。また、FBIが組長の持つ情報を得る代わりに入国と移植手術を幇助したとも報道された。