『純と愛』は、ヒロイン・純(夏菜)の勤務先が買収や火事に遭い、思い入れのある実家のホテルが売却され、母親・晴海(森下洋子)が認知症になり、父親・善行(武田鉄矢)も海に落ちて死亡。さらに夫・愛(風間俊介)が脳腫瘍を患い、昏睡状態のまま幕を閉じるなどのショッキングな展開が続いて「問題作」と言われました。
救いのない物語の中でも視聴者の批判が多かったのは、善行のキャラクター。義父から継いだホテルの経営に失敗して借金を増やしたあげく、家族をだまして自宅ともども売却してしまう。客や取引先にペコペコする反面、頑固さとプライドの高さは人一倍。子どもたちの言葉に耳を傾けず、すべて否定と説教で返す、という強烈な毒親でした。
特に、一人娘でかわいいはずの純に対する風当たりは強く、「そこまで言うか」というほど厳しい言葉を浴びせていました。「娘のために叱っている」というより、「自分が子どもっぽいから怒っている」という幼稚で攻撃的な毒親だったのです。
しかし、『過保護のカホコ』では、毒親の描き方がガラッと変わりました。
◆過保護の毒は親の親にも問題あり
加穂子の母親・泉(黒木瞳)は、「娘のためにやっている」という大義名分のもとに支配するタイプの毒親。毎日の服選び、駅への送迎、弁当作り、恋や就活への口出しなど、「娘のために」という大義名分をオブラートで毒を隠し、加穂子をコントロールしているのです。
穏やかそうないい母親にも見えることもあり、経済的な援助もあるため、子どもはさしたる疑問を抱かずに育ちますが、加穂子のように就活で問題が顕在化。社会への適合や自立ができず、困ってしまいます。『純と愛』の善行は、周囲からも分かりやすい毒親でしたが、問題が潜伏化・長期化するという意味では、毒性は泉のほうが強いのかもしれません。
さらに同作は、加穂子の祖母・初代(三田佳子)の過保護ぶりにもクローズアップ。初代は泉の母親だけに、「過保護という毒は、親の親にも問題あり」というところまで踏み込んでいます。
『純と愛』の善行は、家族に黙って退職したほか、妻が認知症にかかると行方をくらましてしまうなど最後まで毒親のままでした。対して、泉は終盤に向けて変化を見せるのか、変化しないのか。最近の遊川さんはハッピーエンドを選ぶ傾向があるだけに、泉は毒親を卒業できるような気もします。
◆ヒロインの相手役は「毒親対策」だった