『純と愛』との比較で、もう1つ挙げておきたいのが、ヒロインの相手役。『純と愛』の愛は、「『人の心が見える』という特殊能力を持ち、対人トラブルを避けようとして専業主夫になる」というキャラクター。一方、『過保護のカホコ』の初(竹内涼真)は、「思ったことをズバズバ言い、画家の夢を追いかけてアルバイトに励む」というキャラクターです。
真逆のキャラクター設定をしている理由は、それぞれの毒親対策。「人の心が見える」愛は、自分の振る舞いに後ろめたさのある善行の、「正論をズバズバ話す」初は、加穂子への過保護に依存する泉にとっての天敵なのです。
つまり、「ヒロインの相手役は、毒親たちの暴走を止めるキーパーソンとして設定されている」ということであり、今後、泉と初が対峙するシーンがあれば盛り上がるでしょう。遊川さんの脚本は、社会風刺を効かせるとともに、中盤から終盤にかけて、視聴者の予想を裏切る展開を用意しているので期待できそうです。
最後に余談を1つ。同作はネットPRの一環として、“AIカホコ”という新たな仕掛けを用意しました。これは「LINEで友だち登録すると、“AIカホコ”と1対1でやり取りでき、トークを重ねるほどドラマ内の加穂子と同じように成長していく」というもので、友だちの数は1か月で20万人に迫る勢い。
高畑充希さんの役作り、遊川和彦さんの練られた脚本、独自のネット戦略など、随所に渡って進化が見られる作品であることがわかります。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。