「ドラマ放映の後、大阪の地下鉄の駅に日本初のバリアフリーの設備ができたんです(1980年11月)。それからは駅以外の公共の場でもバリアフリー化が進みました。少しは社会貢献できたかな、とも思いますが、今では障害者のサポートは駅員などの“仕事”となり、健常者は無関心になって、“我々の知ったことじゃない”となってしまった気がします。それは高齢者も同じだと思うのです」
同作品の第3部第1話『シルバー・シート』(1977年11月放送)では、仲間が孤独死したことに衝撃を受けた養老院(現在の老人ホーム)の高齢者たちが都電を占拠する。説得に訪れた吉岡に向かって、ひとりの老人が切々と語る。
〈人間は、してきたことで、敬意を表されてはいけないかね? いまはもうろくばあさんでも、立派に何人か子供を育てた、ということで、敬意を表されてはいかんかね?〉
このセリフを書いた時のことを、山田氏はこう振り返った。
「高齢者たちの行き場のない怒りのようなものが、いつか爆発するだろうと思って描きました。当時はひとり身の高齢者を養老院に“隔離”するという考え方があり、高齢者の間にも“自分は温情で施設に入れてもらっている”という意識があった。施設内は規則でがんじがらめで、入所者は不満や憤りを感じている。なのにそのことに誰も気づかない。それで、ある日突然、都電を占拠してしまう。彼らはその理由を言いません。理由を言いたくなくなるくらい、何も言えなくなっている状況を伝えたかったのです」