「すべての治療には何らかの副作用がある。治療を受けるかどうかの判断が非常に難しい場合は『それでも受けたい』のか、『それなら受けたくない』のか、本人の意向が極めて重要。本人に治療の意思が稀薄な場合、特に認知症の傾向がある場合、治療は消極的にならざるを得ない」(同前)
それでは医師が「治療をしない」という選択肢を示す時は患者にどのような言葉をかけるのか。年間300人以上の患者の相談に乗る「がん難民コーディネーター」の藤野邦夫氏が過去の相談例から証言する。
「高齢者を絶望させてしまうので『治療法がない』という言い方はどの医師もしないでしょう。よく聞かれるのは『治療をしてもお金を遣って命を縮めることになりかねない』とか『緩和治療で痛みを取れば、食事もできて体力がつき、少しでも長生きできる可能性がある』という言葉でしょう」
治療するか否かの最終決定は患者が行なう。がん治療の選択は「医師任せ」にはできないのである。
※週刊ポスト2017年9月1日号