それだけでもびっくりなのに、もっと驚いたのは「自宅から徒歩5分くらいの場所を指定して這って行った」って言うんですよ。思わず「何考えてるのよ!」と声を荒げたら、「女優だから家がバレたらいけないと思って……」と。「大原麗子の家なんて、近所中みんな知っているわよ!」って叱ったこともありました。
◆スイカの切れ端
〈亡くなる前年の11月、大原が自宅で転倒したころから、急に連絡が途絶えたという。2009年8月6日、大原の弟・政光氏からの電話で、佐藤氏は彼女の死を知ることになる。死因は不整脈による脳内出血で、すでに死後3日が経過していた。〉
彼女の家の冷蔵庫を開けると、お中元で送られてきたスイカの切れ端が2個半だけ残っていました。
これを見て淋しさや悲しさを感じる一方で、私は、“ああ、麗子さんは天寿を全うしたんだな”とも思ったんです。体力の限界を悟って、「スーッと消えていく」という願いを本当に実行しようとしていた。だから冷蔵庫の中に、もらいもののスイカ以外に自分で用意したような食料がなかったのだと思います。
「孤高」を求めた麗子さんらしい旅立ちでした。
●聞き手/宇都宮直子(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2017年9月8日号