〈大原は2004年以降、テレビなどの表舞台から姿を消した。それから2009年に亡くなるまでの約5年間、そばに寄り添った人物が佐藤氏だった。40年の長きにわたり、大原を公私ともに支えてきた佐藤氏は、その最期が「孤独死」というネガティブな響きの言葉でしか語られてこなかったことに、もどかしさを感じていたという〉
亡くなる6年ほど前、彼女と同居していた時期があったんです。そのころ、彼女の衣裳部屋の壁には『孤独な鳥の、5つの条件』という詩が貼ってありました。サン・ファン・デ・ラ・クルスというスペインの詩人が書いたその詩を彼女は毎日眺めていたんです。
【一つ 孤独な鳥は高く高く飛ぶ
二つ 孤独な鳥は仲間を求めない、同類さえ求めない
三つ 孤独な鳥は嘴を天空に向ける
四つ 孤独な鳥は決まった色をもたない
五つ 孤独な鳥はしずかに歌う】
普通の人だったら毎日見るような詩じゃないでしょう。この詩は麗子さんの生き様そのものなんです。
亡くなる2年ほど前から、麗子さんは「カヨさん、私は死ぬときにはスーッと消えて、そのままいなくなりたい」って言うようになりました。
彼女は孤独に追い込まれたのではなく、自ら「孤高」を選んだのです。