分厚い雪と吹雪に阻まれ、山岳救助隊員が雪崩の現場に到着できたのは発生から3時間以上経ってから。真っ白な雪から、服の一部が覗いていた。懸命の救助活動も虚しく、8人の命が失われた。8人は全員が大田原高校の関係者。1人が教諭での7人は同校の生徒だった。前途ある若者たちの人生は、一瞬にして幕を閉じた。
彼らが生きていれば、今、高校2年生と3年生。犠牲者の中には、合唱部の生徒の同級生も含まれていた。
「当時は街中が大変な騒ぎで、緊急車両がたくさん走り回っていました。生徒たちのショックも大きかったと思います。事故の2日後に予定されていた合唱部の定期演奏会も中止になってしまいました」(前出・地元住民)
彼らがご一家の前で披露したのは、コンクールの課題曲を含めた4曲。そのうちの1曲が、シンガーソングライターのアンジェラ・アキ(39才)の『手紙 ~拝啓 十五の君へ~』だった。
アンジェラ・アキが15才の時に自身宛に綴った手紙を、30才の誕生日に母親から渡されたことをきっかけに作られたというこの曲。
《十五の僕には誰にも話せない 悩みの種があるのです》
「NHK全国学校音楽コンクール」の課題曲にも選ばれた同曲は、命や希望を奮い立たせる歌詞も相まって、2010年に関西電力の企業CM『阪神淡路大震災メモリアル~15歳の君へ』編のBGMに採用されると、2011年には東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県仙台市で開催されたイルミネーションイベントのテーマソングとしても使用された。
そしてその日、まるで先に旅立った仲間たちへの鎮魂の歌のように、夏の終わりの那須の空に響いた。
「アカペラで歌う生徒たちの歌声に、ご一家は熱心に聞き入られたそうです。15分ほどで歌い終わり、最後に16人が横一列に並ぶと、お三方は1人1人に“素晴らしかったです”と労いの言葉をかけられ、しっかりと握手までされたそうです。愛子さまと同級生の高校1年生の生徒には、雅子さまが、“愛子も15才ですよ”とお話しになったといいます。生徒たちとの会話の中では雪崩の事故については触れませんでしたが、学校関係者には“大変なことでしたね”と、励ましの言葉もあったそうです」(別の地元住民)
生徒たちとの「命のやりとり」は2時間近く続いた。
※女性セブン2017年9月14日号