「安倍さんがわずか1年で退陣して失意の底にあったときも、今井氏は一緒に高尾山に登るなど親交を持ち続けたことで深い信頼を得た」(安倍ブレーン)

 政務担当の首席秘書官は政治任用ポストであり、今井氏にすれば官僚としての出世をあきらめて首相と命運をともにするという決断だった。

 安倍家と今井家も奇しき縁で結ばれている。前出の伯父・善衛氏は戦前の商工省官僚時代、安倍氏の祖父・岸信介氏の部下だった。今井氏が通産省に入省した1982年の通産大臣は安倍氏の父・晋太郎氏だ。そうした世代を超えた両家の絆が2人の信頼関係を一層強めたのは間違いない。

 そして官邸中枢に座った今井氏はアベノミクスの経済政策から、消費税率10%への増税再延期、ロシアとの北方領土交渉や衆院解散・総選挙の戦略まで、安倍政権の“謀臣”として主要な政策を立案してきたとされる。しかし、安倍首相は疑問を抱き始めた。

「最近、今井さんが僕に厳しい」という首相の言葉を知って、今井氏は愕然となったようだ。政治ジャーナリスト・藤本順一氏が語る。

「オフ懇メモを読むと今井秘書官が安倍離れに動いたかのように見えるが、現実は逆です。これまで安倍首相は閣内や官邸で意見が割れたときは盟友の麻生太郎・副総理や菅義偉・官房長官の意見より今井氏の判断を重視してきた。しかし、支持率が急落したことで側近政治では政権が持たなくなってきた。それで今井氏とも距離を置いた。今井氏にすれば総理の心が離れたと察知して、つなぎとめるために『総理がそんな姿勢なら辞める』などと言い出したというのが真相でしょう。メモの発言は焦りの裏返しに思える」

 安倍首相の方が“今井切り”に傾いて2人の信頼関係が壊れたという指摘である。

※週刊ポスト2017年9月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
ラブホテルから出てくる小川晶・市長(左)とX氏
【前橋市・小川晶市長に問われる“市長の資質”】「高級外車のドアを既婚部下に開けさせ、後部座席に乗り込みラブホへ」証拠動画で浮かび上がった“釈明会見の矛盾”
週刊ポスト
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
新聞・テレビにとってなぜ「高市政権ができない」ほうが有り難いのか(時事通信フォト)
《自民党総裁選の予測も大外れ》解散風を煽り「自民苦戦」を書き立てる新聞・テレビから透けて見える“高市政権では政権中枢に食い込めない”メディアの事情
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン
出廷した水原一平被告(共同通信フォト)
《水原一平を待ち続ける》最愛の妻・Aさんが“引っ越し”、夫婦で住んでいた「プール付きマンション」を解約…「一平さんしか家族がいない」明かされていた一途な思い
NEWSポストセブン
公務に臨まれるたびに、そのファッションが注目を集める秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
「スタイリストはいないの?」秋篠宮家・佳子さまがお召しになった“クッキリ服”に賛否、世界各地のSNSやウェブサイトで反響広まる
NEWSポストセブン
司組長が到着した。傘をさすのは竹内照明・弘道会会長だ
「110年の山口組の歴史に汚点を残すのでは…」山口組・司忍組長、竹内照明若頭が狙う“総本部奪還作戦”【警察は「壊滅まで解除はない」と強硬姿勢】
NEWSポストセブン
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 電撃解散なら「高市自民240議席の激勝」ほか
NEWSポストセブン